「現実とは違う言葉遊び、でもなんかリアル。」PASSION osincoさんの映画レビュー(感想・評価)
現実とは違う言葉遊び、でもなんかリアル。
言葉のセンス、会話劇のレビューに納得。
藝大時代の作品にして、このクオリティ。
直前にテンポの悪い作品を観たばかりだったので、尚更テンポの軽妙さに驚いてしまいました。
劇中は言葉のラッシュで、誰も話していない時間の方が少ないくらいだったように思います。それなのに、なんでしょう、この入ってくる言葉。しかも、こちらの理解が追いつくギリギリのテンポで、適度に予測を裏切られながら進んでいくような。共感とかは置いといて、ただ圧倒されました。
確か、ヒット曲も『予測の裏切り』があると聞いたことがあるんですが、誰が言ってたんだったかな…
耳馴染みの良さに加え、適度に外されると中毒性に変わる感じ。
唐突なシーン展開も、なんだか成立している。
演者はどれだけ言葉を落とし込んだんでしょうか。
このシーン何回撮ったんでしょうか。
なんでしょうこの生々しい感じ。
まるで小説を読んでるような気持ちになったのですが、濱口監督、東大文学部出身なのですね。
製作側と観客目線のギャップを埋めるのってとても難しいことだと思うんです。制作側はある意味ネタバレしているわけで。それを観客に向けてどういう順に、どう見せていくって、どうやって組み立てていくんでしょうか?自分はその辺、ほんとに不得意なんで、映画にしろ、小説にしろ、漫画にしろ、物語を製作する人たち、尊敬しかありません。
このリアリティを出すためのメイキング、見てみたくなりました。
言葉だけでなく、印象的な映像もたくさん。
占部房子さんとマンションの感じ、ウォン・カーウァイ作品の雰囲気を思い出しました。
バスのシーン、工場萌えシーン、よき。
今回の濱口監督特集で、『ハッピーアワー』の監督であることを知りました。公開当時、イメージフォーラムで散々悩んで、観られなかった作品(300分超えの時間が取れず)。
いろいろ観てみたくなりました。