PASSIONのレビュー・感想・評価
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言葉選びのセンス
濱口竜介監督の東京藝術大学時代の作品なのだが、この完成度で学生映画とはすごい。男女5人のすれ違いを描いた作品だが、それぞれの好意が向かう矢印がかみ合わないことによる、滑稽さ、切なさ、痛さが素晴らしく豊かに描かれている。煙突からモクモクと煙があがる朝に、男と女が歩いていく長回しカットの素晴らしさが目に焼き付いて離れない。 濱口映画は、会話劇だ。この映画も軽妙なテンポで会話が進んでいく。質問して本音を答えた人が次の質問ができるルールの遊びのシーンの緊張感と可笑しさが同居したあの感じを作れるのは本当にすごい才能だと思う。 役者陣は、その後の濱口映画の常連となった者たちが多数出ている。みんな良い顔をしているし、いい声をしている。役者の肉体と音に対する濱口監督の鋭敏なセンスがすでに見えている。 映画における会話の自然さとはなんだろうと、考えながら見ていた。自然な日常会話そのままで、映画として自然な会話になるわけではないんだなと、この映画を見て思った。
終わり方が不思議
高校の同級生達の恋愛。見事に片思い同士。 そんな関係の中で、とにかく本音を知ろうと会話が続く。 この映画、言葉の重みはすごい。 特に高校教師の主人公の女性が暴力について生徒に語りかけるシーンは,監督の意思を感じた。このテーマで映画撮ったらいいのに。 正直,男女の間の会話は,微妙に入り込めず,最後の男の行動もなんなの?ってなって、不完全燃焼だった。この映画,きっともっと言いたいことあったけど,長すぎるからカットしちゃったのかなと思うような場面がいくつかあった。残念。
登場する男女は高校時代から10年以上の付き合いのようだが、特別仲が...
登場する男女は高校時代から10年以上の付き合いのようだが、特別仲が良さそうでもなく、何となく微妙な雰囲気で話が進んでいく。 途中、教師役の河井青葉の「暴力」についての哲学的な授業はなかなかおもしろかった。 また後半の本音を語り合うゲームも。 ただ、あの終わり方は何だろう。 「もう一度チャンスをくれ」って、自分から女をふっておいて、その直後にもう1回やり直そうということかな。 軽薄過ぎる。
心の状態を描いていく作業は大変だと思う。若い学生がそういうテーマを...
心の状態を描いていく作業は大変だと思う。若い学生がそういうテーマを扱い、高いレベルで完成させるのはやはり才能なんですね。シナリオ・予算等含めて、上映出来るレベルの映画を完成させた事は凄い事です。
現実とは違う言葉遊び、でもなんかリアル。
言葉のセンス、会話劇のレビューに納得。 藝大時代の作品にして、このクオリティ。 直前にテンポの悪い作品を観たばかりだったので、尚更テンポの軽妙さに驚いてしまいました。 劇中は言葉のラッシュで、誰も話していない時間の方が少ないくらいだったように思います。それなのに、なんでしょう、この入ってくる言葉。しかも、こちらの理解が追いつくギリギリのテンポで、適度に予測を裏切られながら進んでいくような。共感とかは置いといて、ただ圧倒されました。 確か、ヒット曲も『予測の裏切り』があると聞いたことがあるんですが、誰が言ってたんだったかな… 耳馴染みの良さに加え、適度に外されると中毒性に変わる感じ。 唐突なシーン展開も、なんだか成立している。 演者はどれだけ言葉を落とし込んだんでしょうか。 このシーン何回撮ったんでしょうか。 なんでしょうこの生々しい感じ。 まるで小説を読んでるような気持ちになったのですが、濱口監督、東大文学部出身なのですね。 製作側と観客目線のギャップを埋めるのってとても難しいことだと思うんです。制作側はある意味ネタバレしているわけで。それを観客に向けてどういう順に、どう見せていくって、どうやって組み立てていくんでしょうか?自分はその辺、ほんとに不得意なんで、映画にしろ、小説にしろ、漫画にしろ、物語を製作する人たち、尊敬しかありません。 このリアリティを出すためのメイキング、見てみたくなりました。 言葉だけでなく、印象的な映像もたくさん。 占部房子さんとマンションの感じ、ウォン・カーウァイ作品の雰囲気を思い出しました。 バスのシーン、工場萌えシーン、よき。 今回の濱口監督特集で、『ハッピーアワー』の監督であることを知りました。公開当時、イメージフォーラムで散々悩んで、観られなかった作品(300分超えの時間が取れず)。 いろいろ観てみたくなりました。
乗り物内の会話劇から掬い取るもの。
初見。 会話成立の不全でこそ僅かだが確かに成立するかの相互理解を掬い取る。 その為に関係性のスリルを追いリアリティは度外視する濱口竜介。 こんな奴らいないだろ。 受賞の近作の題にもなる乗り物内での会話に拘る撮り癖も。 ただ面白くはないから好きでない。 価値はありそう。
二十代ってこんなに子供だったのかぁ
友人同士の誕生会で結婚を報告したカップル、妻が妊娠中の男、一人フラフラしている男が彼女の家に行こう、と言い出す。 その後は子供じみたおままごと状態が続く。 本人たちは一生懸命らしいので、なお痛々しい。
恐るべき会話劇
特集上映「濱口竜介アーリー・ワークス」にて。 人間関係とは儘ならぬものであり生きているって実は薄氷を踏むことのようだ、という感覚。 下手を踏むとただの頭でっかちな会話劇になりうると思うのだが、会話の質感がリアルすぎる。リアリティを演出で追求している、というより役者が完全にこの役に生きてしまったというか、そういう類の迫りくるリアルがあった。 居心地は常に悪いけど若さでは走れなくて、でも大人の方が時折突拍子もないことをする。若さと大人になることへのアンバランスを見た気がした。 感想としては、本当に私この映画に出てくる男の人たちがわからない。他人事だからか。占部房子は死ぬほどわかる。河井青葉は一周回ってよくわかんない。多分あれは自分もよくわかってない何かにしばられているんだな。
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