項羽と劉邦のレビュー・感想・評価
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コテコテ少年マンガ的項羽と劉邦
邦題をサブタイトル入りの『項羽と劉邦 WHITE VENGEANCE』としているサイトもある。ダニエル・リー監督ということでちょっと不安だったんだが、その不安はやはり的中。大筋では歴史に沿いながらも大幅にオリジナルな展開で、それはまあいいとしてもその展開や人物のキャラや演出が笑っちゃうくらいコテコテの香港映画ノリ。また項羽と劉邦挙兵後の話とはいえ2時間ちょっとに話を詰めこんだためダイジェスト感が強い。
本作の劉邦は珍しく『三国志演義』の劉備みたいに無能だけど高潔な善人キャラ。虞姫にほのかな想いを寄せるが、ラブラブの項羽と虞姫は全く気づかず、善人劉邦も特に行動は起こさないので、このテーマは特に深まらないまま消滅してしまう(ちなみに呂雉は登場しない)。項羽はひたすらイケメンで虞姫はひたすら美しいというわかりやすさで、他の人物もなんだかキャラがマンガ的。
裏主人公とも言えるのが范増と張良で、智者は智者を知るライバル関係に描かれ、范増の最期に張良が駆けつけて看取ったりするのだが、范増役のアンソニー・ウォンの演技があまりにも大仰でクサい芝居だ。鴻門の会でも漢文の授業で習ったような史実エピソードはそこそこに、なぜか范増と張良が中国囲碁?で勝負する展開となり、しかもそれがどういうわけか囲碁の形を借りた気功合戦みたいになって、范増「3四、黒!」ドカッ! 張良「グハァ!(と血を吐く)」みたいなノリになり、さすがに笑ってしまった。
韓信もアクション俳優のアンディ・オンが演じてるからか、軍隊を率いてるのに個人の格闘チャンバラばっかりで、アクション・シーンもなんだかカンフー映画っぽい。わざわざ劉邦の元に援軍要請に来て兵を得た韓信が、合戦では結局1人で戦ってて、だったら援軍いらねーじゃん!
最後は、あんなにいい人だった劉邦が史実通り粛清を始めちゃうんだが、一応死んだ范増が劉邦らを陥れるために残した最後の策という設定とはいえあまりに唐突。ちなみに実際に粛清した人が韓信しか登場しないため、劉邦は勢い余って張良・蕭何・樊噲まで粛清しちゃってる。まさにツッコミどころ満載の珍作だった。
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