「広川の思想止まりの結論」寄生獣 完結編 SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
広川の思想止まりの結論
この映画の印象は、100x100の100,00ピースのジグソーパズルのピースを拾い出して、10x10の絵を完成させろ、と無茶振りされて作ったもの、という感じ。
原作のプロットを拾い出して、あれこれ時系列まで並び替えてつぎはぎして、全体的になんとか整合性のある絵にしてあるのは、ある意味すごいと思う。
でも、元の100,00ピースの絵の完成度があまりに高いので、それを知ってる人からすると、ピースのつなぎ目の不整合さにどうしても目がいってしまう。いや、そこつながんないでしょー!って。
それはキャラの行動や心理だけでなく、テーマについてもそうで、この映画は全体的に何が言いたいのかさっぱりわからない。はしばしに原作要素があるものの、全体としてつながっていない。
原作でもアニメでも号泣したり大きく心を揺さぶられたシーンが、この映画では「あれ?」って感じになってしまった。
個人的にどうしても最後までうけいれられなかったのが、ミギー。
声と性格はユーモアあふれる演技力たっぷり、姿はかわいらしいクレイアニメのようで、シリアスなこの話には似つかわしくなかったと思う。
最後の後藤との戦いのシーンは、映像的には迫力があって良かった。でも後藤がバラバラになるシーンはやりすぎで、ほんとにこれじゃアニメだよっ!って感じだった。
あと、映画オリジナルの部分として、パラサイトに「この種を喰い殺せ」と命じるものが、実は人間だった、ということを後藤が語っている。
ちょっと面白い考え方だなと思ったけど、これじゃ広川の思想止まり。主人公が一度後藤に止めをさすのをやめて、そのあとおもい直して、やっぱり止めをさすシーンは、原作では重要なところなんだけど、広川の思想止まりのこの映画でそれをやっても意味不明なシーンになってしまった。
後藤を倒した毒が放射性物質に変更されてたけど、なんか腑に落ちなかった。人体に即効で効果を及ぼすほどの放射性物質って…。しかもそれがあんなふうに管理されてるなんて…。このへんのリアリティ考証いい加減すぎる。
こんなに原作をバラバラに切り刻んで無意味にうまくつなぎ合わせることに苦心するんだったら、いっそのこと、シンイチとミギーは登場しない、パラサイトの存在する世界のアナザーストーリーにすれば良かったんではないのかな…。
いろいろ悪いことばかり言ったけど、映画は真面目にちゃんと作ってあって、原作を知らない人が観たらそれなりに面白いんだと思う。でも感動できるかといったらどうかなー。