劇場公開日 2014年11月29日

  • 予告編を見る

「見終わった後に"残った(或いは"遺った")"物」寄生獣 平田 一さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0見終わった後に"残った(或いは"遺った")"物

2014年12月3日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

知的

"本当に人間のことが知りたいなら、(脳を指して)ここを探しても無駄だ。心はそんなところにはない。"

上に書いた文章は昔テレビで一度見た『ダークシティ』内の台詞で、主人公マードックが敵団体の中心人物へ伝えたものです。どうして最初にこの映画で、何故この台詞を出したかと言うと、これが真っ先に浮かんだからです。それほどこれは"何か"が残るんです。
僕は原作を(ほぼ)読んだことないですし、今やってるアニメ版もまだ途中しか見ていないので、あくまで映画版の感想になりますが、これは一言、"問題作"でした。それは単純な"勧善懲悪"じゃ括ることができないほどで、"テーマ"を別の視点で見ると、また違った輪郭が見えるのではという"可能性"を感じたからです。テレンス・マリック監督の『シン・レッド・ライン』が戦争映画の皮を被った、何重もの解釈が可能なように…。それほどの"可能性"を感じる映画が、日本でしかも実写で見れられるというのは、思いがけなかっただけにショックすら受けました。勿論良い意味でです。
何故なら監督の山崎貴さんは以前手掛けた『BALLAD』と『ヤマト』実写版がイマイチすぎたので、今回の漫画実写化、しかも残酷描写ありの映画を撮れるわけないと思ってました。役者陣も豪華すぎて『20世紀少年』みたいな不満だらけの映画かなとも。
だけどそれを裏切られたのは、最初の田宮良子の"台詞"でした。その導入部分が明らかに、今までの日本映画と異なっていて、何ていうか"重み"があったんです。本当に"映画"とその"テーマ"を具現化させようという重みが。そこから新一とミギーの出会い、新一が里美の胸を揉む、母親が殺させて寄生させるシーンまで一切無駄がなかったです。特に里美が胸を揉まれるシーンは、カットせずにやってくれたので男子的には"ヨッシャ!"でした!こっそりガッツポーズしたぐらいですから(笑)
その里美役の橋本愛さん、演技を見たのは『告白』以来ですが、まだ若いのに凄い女優さんでした。微かな表情と声だけで里美の不安を一瞬で表現して、"演技"っていう作り物を感じさせず、しかも陰りはあるけど華も感じさせるかなりの難役をやってましたね。彼女の演技を見るだけでも本作の価値は充分ありますよ。
あと新一役の染谷将太さんも役を越えた瞬間を感じましたね。それが出てたのは後半の展開で、同じ境遇の青年・島田と自分の母親を殺すシーン。ここで見た染谷さんは最早演技をしている役者じゃなくて、怒りと哀しみに"寄生"された泉新一でしたね。昔『タクシードライバー』を見たときのデ・ニーロが見せたトラヴィスを、一瞬思い出したほど演技レベルが違っていました。過大評価かもしれませんが、その時の染谷さんにデ・ニーロがよぎったんです。
予想外はまだあって、演技を見るのはこれが初めてだった島田役の東出さん、田宮良子役の深津絵里、このお二人も凄かったです。特に東出さんの島田は、本作が星5になった大きな理由ですから!詳しいことを書きたいのですが、書きたくても上手く書けないので、これは一回見に行ってください!本当凄すぎる演技でしたから!
長々と書きすぎてしまいましたが、とにかく一度見てください!これほど見た後誰かに伝えて、色んな話をしたいと思う、日本映画はなかなかありません。しかもそれが東宝という、メジャー映画ならなおさらです。見終わったら題名の意味も、人に寄りけりでも分かると思います!後編も見ないわけには行きません!Blu-ray出たら速攻買います!!

平田 一