「もはや恐竜ではない」ジュラシック・ワールド HBさんの映画レビュー(感想・評価)
もはや恐竜ではない
一作目が何故あんなに人を引きつけたのか、監督は履き違えているのではないか、と。
全ては「恐竜」だったのだ。
古代の生き物が現代に蘇り、そこに「ありそう」と思わせるリアリティーと、ロマンがあった。
今のリアリティーといえば、逆に「DNA操作」で新しい生物を作り出すことなのかもしれないが、だったらもう「ジュラシックパーク」じゃないよね、と。
見えなくなる最強の恐竜とやらも、ただのトカゲ(DNAにはカエルも入ってるとか)。
水中を動くモササウルスとやらも、オオサンショウウオみたいだし、どうやら分類上は恐竜でもないとのこと。
もはやパークは、なんでもありの「化け物見世物小屋」の風体を醸し出している。
クライマックスでティラノサウルスが出てくると、やはり美しさに惚れ惚れするところはあるが、その他のモンスターに、なんらリアリティーも魅力も感じなかった。
また、軍人が活躍し、適当なラブストーリーを繰り広げるという浅い展開にも辟易。
キャラクターに深みはなく、ニコニコしているが実はマッドサイエンティスト=中国人=すぐお茶を飲む、などのステレオタイプな描き方も気になった。
そうじゃないんですよ。軍人が活躍しちゃダメなんですよ!ジュラシックパークは(軍人押しな割りに、ストーリーラインに全く関係ない戦争批判的な描写もあって、作り手の中途半端な自己主張も鼻についた)!
普段は虐げられているようなオタク(学者)が、恐竜のウンチクを駆使しつつ、恐竜と戦っていく。
そこにスリルとリアリティーとロマンとか、いろんなものが詰まっていて、応援したい気持ちになったんです。
ヘリでやってきて、機関銃をぶっ放し、恐竜を追い詰めていく…観ながら、何が楽しいのかなあ…という気持ちになった。
一作目では、「ハモンズが、純粋に夢を追いかけていたが、それが悲劇を生んだ」こと自体に切なさがあり、責め切れないところがあったのに対して、現在のパークの運営者は(これまたステレオタイプな)インド系で、ロマンを大切にしてる風な口ぶりだが、結局は「高いお金をかけた恐竜だから殺すな」的な発言で、やはり金の亡者だという感じが丸出しになるし…全く同情の余地、共感のポイントがない。余談だが、彼がヘリの免許を取得していないがヘリコプターを操縦する、など、随所で細かなコメディー要素がちりばめられているのだが、それもイマイチハマってない。
以前のパークを頭ごなしに批判するだけで、セキュリティの強化を図ったなどの工夫も全く見られない現パークの運営ぶりにも疑問を感じるし、とにかくストーリーは穴だらけ。
ラストも畳み掛けるような御都合主義でウンザリ。
唯一人間味を感じたのは、恐らくスピルバーグの要望で入れられたと思われる「両親の離婚エピソード」w
彼の作品で往往にして見られる上記のテーマだが、メインキャストの兄弟が普段は仲が悪かったのに、危機を通じて絆が芽生えていく様子や、それにより両親の離婚が回避されるかもしれない予感を感じさせる、などの描写には、唯一人間性を感じた。
やっぱりなんだかんだで、スピルバーグが凄かったんだな、と思わされた次第。
それにしても、この監督キャリア3年にしてジュラシックパーク新作(しかもこれがキャリア2作目!)、で、次はスターウォーズだとか!私の心のスターウォーズが…汚される予感…。辛い…。