「家族狂騒曲」8月の家族たち 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
家族狂騒曲
ピューリッツァー賞とトニー賞を受賞した戯曲の映画化。
父親失踪の知らせを受け、三姉妹がオクラホマの田舎に住む母の元に集い…。
集まったのは、長女夫婦と娘、次女、三女と婚約者、叔母夫婦と息子。
全員が、一癖アリ。
まず、母親がモンスター。癌を患い、薬中で、情緒不安定で、毒舌家。
長女は夫の浮気と反抗期の娘に手を焼く。
次女は従弟と密かに付き合い、三女はヘンな男を連れて来て…。
叔母は一見陽気だが、鬱陶しい。
全員で食卓を囲むシーン。
久々に家族が揃ったというのに、ピリピリイライラ、険悪ムード。
口を開けば相手を傷付ける事ばかり言い、傷口に塩を塗り合う。
怒鳴り、罵り合い、挙げ句の果てに取っ組み合いの大喧嘩…。
さらに、全員がそれぞれ秘密を抱えている。
次々と暴露される家族の秘密。明かされる衝撃の真実。
家族が集えばいざこざがあるのは、何も映画の中だけではなく実際に身に覚えがある方も多いだろうが、これは辛辣。
「遺伝子で繋がるだけの無作為に選ばれた細胞」と劇中でかなり皮肉めいて言ってたように、結局一人一人は赤の他人。
それでも、家族という不思議な関係。
凄みたっぷりのメリル・ストリープ、堂々と張り合うジュリア・ロバーツ、オスカーにノミネートされた二人がさすがに巧い。
ユアン・マクレガー、クリス・クーパー、アビゲイル・ブレスリン、ベネディクト・カンバーバッチ、ジュリエット・ルイス、サム・シェパード…豪華キャストと言うに相応しい豪華な面々が極上アンサンブルを見せ、それぞれ見せ場もある。
この面子の中では比較的知名度が低い次女役のジュリアン・ニコルソンがなかなか印象を残す。
これだけ家族の醜態を見せられれば鬱気分で後味悪いまま終わるのかと思いきや、案外そうは感じなかった。
喧嘩し、本音を言い合い、全てをさらけ出しても、その裏側にあるのは…。
ラストシーンも忘れ難い。