「言いたい放題、舞台劇」8月の家族たち ジョジョさんの映画レビュー(感想・評価)
言いたい放題、舞台劇
とっくみあいの親子喧嘩、それも老境に入って酒と薬まみれの母親と、中年の娘とが本気で! ストレスをしまいこみがちな日本の家庭ではまず考えにくい設定だが、この映画では個性の強い登場人物たちがやってのける。こうなると舞台劇の映画化もまんざら退屈なものではない。言いたい放題、やりたい放題、作者の思いのたけをさらけ出しているのは、本来、舞台劇の目指すところだ。
ー中略ー
肝心の自堕落な母親を演じるのは、またしてもメリル・ストリープ。いい加減、彼女以外の女優に配役できないものだろうか。過去に舞台劇で類似した”怪物”役を演じた女優たちを思い出すと、たとえば『ヴァージニア・ウルフなんか怖くない』のエリザベス・テイラーや『欲望という名の電車』のヴィヴィアン・リーなど、鬼気迫りぶりが怖いくらいだった。比べるとストリープは、鬼気迫ってなんかいない。優れた演技者の頭で冷静にハジキ出した「振り」が、この母親役の表面をしっかり覆っている、と見えるのは私だけだろうか。
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