劇場公開日 2014年9月27日

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「日々の生活を大切に生きろのメッセージが素直に響く、イギリス映画の清潔なユーモア」アバウト・タイム 愛おしい時間について Gustav (グスタフ)さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5日々の生活を大切に生きろのメッセージが素直に響く、イギリス映画の清潔なユーモア

2020年7月15日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

過去にだけタイムトラベルが出来る能力を一族の男性のみ受け継ぐ親子の絆を、優しくこころ温かく描いた家族劇。恋愛に臆病で自信が持てない青年弁護士の主人公ティムが、タイムトラベルを駆使して幸せな結婚にたどり着くコメディドラマの親しみ易い内容のイギリス映画になっている。監督業より脚本家としての才能が高いリチャード・カーティスのストーリーテラーの美点が、澱みのない軽快なストーリー展開と一寸下品でいて粋な大人のユーモア溢れる台詞に表れていて楽しい。SFもののご都合主義や、失敗の連続で人生を学ぶ主人公の設定から発生するウイット不足を承知した上で、やり直せない一度だけの人生を後悔のないものにするために日々の生活を大切に生きろの主題が、素直に響いてくる佳作である。
脚本の良さは沢山あるが、妹の友人シャーロットと再会するシークエンスが特に素晴らしい。初恋の相手に接近して話し掛けるティムのドタバタ振りと、そこにある思い込みの会話が命取りになる人間関係の危うさ。シャーロットのゲイの友人とティムの友人ジェイの登場人物としての使い方が秀逸であり、この出来事でメアリーに求婚する物語の展開もいい。シャーロットの誘惑に何とか踏み止まり、メアリーの許に駆け急ぐティムの男のいじらしさ。不純な気持ちを取り払おうとする男のありのままを姿を正直に描いた大人の表現だ。また、ティムとメアリーの初めての夜の試行錯誤には笑いが止まらない。男の夢想をこんな形で見せられるとは、上品な艶笑喜劇!?
自分の事に特化したタイムトラベルの欠陥に子供だけは自由自在にできない物語の結末が、改めて冷静に考えると深いものがあり、出産の神聖さに気付かされる。主人公夫婦の第三子に絡むティムと父の永遠の別れが物語をまとめる。この作品は、人生の折り返し点を過ぎた年代で観ては勿体ない。30歳になる前に観るべき内容と、押し付けがましくない教訓を持っている。

主演のドーナル・グリーソンとレイチェル・マクアダムス共に好演。ビル・ナイ始め脇の役者全てが肩の力が抜けた品の良い演技を見せてくれる。シャーロット役のマーゴット・ロビーの弾ける若さと美しさもいい。出演者全ての満足感漂う、何とも可愛いくて心安らぐイギリス映画。

Gustav