劇場公開日 2014年9月27日

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「名匠リチャード・カーティスが最後の監督作でたどり着いた柔らかな境地」アバウト・タイム 愛おしい時間について ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5名匠リチャード・カーティスが最後の監督作でたどり着いた柔らかな境地

2019年8月29日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

日常の中でふと、この映画について思い出すことがある。自由な時間が無限にある若い頃には気づかなかったかもしれないが、大人になって、歳を重ねて、自分がもう後戻りはできないのだなあとつくづく感じる瞬間に、「時間」や「人生」について描いたこの物語の優しさと切なさがぎゅっと胸を締め付けるのだ。

主人公は代々、タイムスリップする能力を有している。が、どれだけ行使しようとも、決して完璧な人生が送れるわけではなく、むしろ大切なのは、誰か大切な人と共にある「ありふれた時間」ということに気がつくのだ。かくも登場人物が何ひとつ特別な何かを成し遂げるわけではないからこそ、観る者はそこに映画と現実の隔たりを感じることなく、彼らに深く共感せずにいられなくなる。ささやかだけれど、ここにリチャード・カーティスが「最後の監督作」として描きたかった境地があるのだろう。自分を見失いかけた時、そっと寄り添ってくれる名作である。

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牛津厚信