「生き残るための選択」新しき世界 arakazuさんの映画レビュー(感想・評価)
生き残るための選択
監督自身が明らかにしているが、パク・フンジョンは『ゴッドファーザー』(フランシス・フォード・コッポラ)、『インファナル・アフェア』(アンドリュー・ラウ、アラン・マック)、『エレクション』(ジョニー・トー)といった東西の傑作がお気に入りだそうで、乱暴な言い方をすれば、本作はこの3本(どちらもシリーズ)のいいとこ取りという言い方も出来るだろう。
警察の潜入捜査官という設定は『インファナル・アフェア』だし、真っ当な堅気の世界と犯罪組織という裏の世界の間で苦悩するジャソンのキャラクターは『ゴッドファーザー』のマイケルを思わせる。組織の後継者争いの血生臭さは『エレクション』だ。
しかし、本作はただの物真似ではない。
この作品の非凡さは、三つの作品の設定やキャラクターを借りつつも、まったく新しい、パク・フンジョンオリジナルの作品を作り上げていることだと思う。
本作をオリジナル足らしめている最大の要因は、ジャソンの運命を決めることになるチャン・チャンというキャラクター。
彼と、彼の行動が、
まさにジャソンに生き残るための選択をさせるのだ。
イ・ジョンジェ、チェ・ミンシクという安定安心の二人に加え、チャン・チャンを演じたファン・ジョンミンが素晴らしかった。
軽さ、強かさ、温かさ、狂気、情。ひとりの人間の中の複雑な感情、性格を見事に体現していた。
老獪な警察幹部、日和見な組織の理事たち。男たちの表情の捉え方、撮り方に痺れる。
監督自身による脚本は勿論のこと、ストーリーが収束していく終盤のシーンの繋ぎ方、編集の巧さにも唸った。
今作は三部作の二作目として製作されたという。6年前のジャソンとチャン・チャンの姿は一作目に繋がる布石だろう。
新たな傑作シリーズ誕生の予感である。