家族ゲームのレビュー・感想・評価
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80年代初頭の時代の空気感を実にシュールにシニカル描いており、まさに80年代の代表的な1本ですね。
新文芸坐さんにて「森田芳光70祭2024 in 新文芸坐」(12月14日~15日)開催。 久々に監督代表作『家族ゲーム』(1983)を鑑賞。 上映後には宮川一朗太氏、ライムスター宇多丸氏、三沢和子氏のトークショーも実施。 『家族ゲーム』(1983) 型破りな家庭教師・吉本勝(演:松田優作氏)と高校受験を控えた問題児・沼田茂之(演:宮川一朗太氏)の関係を中心に沼田家を取り巻く騒動を描いた作品。 レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』のように家族が横一列に並ぶ食事シーンが従来のホームドラマの円卓と違い、家族間の不協和音、各々バラバラな関係性を見事に描いた斬新な演出でしたね。 決して教育熱心ではない吉本と沼田とのヒリヒリした距離が徐々に縮まっていく緊迫感は、松田優作氏の圧倒的存在感のなせる業、家庭教師・吉本の素性や内面も最後まで最小限しか明かさず、沼田家にとっては「謎の闖入者」になっている点も良いですね。 また劇伴も最小限で、食事の咀嚼や食器の当たる音が緊迫感を助長させていましたね。 公開当時はいじめや受験戦争、バット殺人などが社会問題になって、新藤兼人監督『絞殺』(1979)などの作品がありましたが、80年代初頭の時代の空気感を実にシュールにシニカル描いており、まさに80年代の代表的な1本ですね。
価値相対主義や個人主義社会の危うさに焦点を当てたブラックコメディ
時代的に、「核家族化」、「少子化」、「偏差値教育」、「校内暴力」、「いじめ」等の社会問題が一般化してきた時期を象徴する、ある意味、非常に分かりやすい社会風刺映画。 食卓に一列に並んで食事をするシーンや、まるで噛み合っていない会話等、家族同士ですらお互いの心が向き合っていない事を端的に表している。そんな個人主義や相対主義が誇張されたような家族の中に、ひとりの家庭教師が入り込み、その家庭をめちゃくちゃにして去って行く。しかし、その一見、理不尽で暴力的な行為は、オヤジの「鉄拳制裁」よろしく、むしろ異常なまでの個人主義に対する「常識の鉄槌」としての効果を狙ったものなのかも知れない。 早くから価値相対主義や個人主義社会の持つ危うさと問題点に気付きながら、変に説教臭いドラマではなく、あえてドラスティックにブラックコメディとして仕上げた監督の先進性を評価。
優作の新境地。伊丹十三は印象的な演技。
少年時代の宮川一朗太が、受験生役、アクションヒーローの松田優作が家庭教師役と、かなり型破りな配役です。 伊丹十三の「チュルチュルできない…」由紀さおりの「お好きだったんですか…」は、印象的で、そのまま夫婦の関係が透けて見える秀逸な演出。 それ以外に見るもののない、退屈で平板なストーリーだと思いました。
予言的中!ギャップを感じなくなった沼田一家。
森田芳光の監督2作目。1983年公開。 沼田家の面々と家庭教師のものがたり。 ・子供の進学先しか関心がない父(伊丹十三) ・優しいがまるで主張のない母(由紀さおり) ・進学校に合格したが無気力な長男(辻田順一) ・勉強も学校生活も冴えない次男(宮川一朗太) ・次男のために雇われた家庭教師(松田優作) 一家4人+家庭教師が、横1列に並んで食事するシーンが本作を特徴づけている。 BGMがなく(当然、本作にはサントラもない)、咀嚼音や食器の音がかなり強めに耳に入ってくる。 さて、肝心のレビューだが、 最初に見たときと、今とではかなり受け止めが異なる。 (当たり前か笑) 例えば、 伊丹十三演じる父が、朝食の目玉焼が固すぎると真顔で不満を訴える。 「なんだ、この黄身は。こんな固くちゃチュウチュウできないじゃないか…」 最初に見たときは、 「そんな甘えたオッサンおるわけないやろ」 と、笑えたものだが、最近だとスルーだ。 繰り返し見たから鮮度が落ちた? いや、そうじゃない。 何が言いたいかというと、 昭和の時代に笑えたギャップが、令和の今では「多様性のひとつ」程度の受け止めになる。 時代が変わったのだ。 次男がノートに「夕暮れ」をひたすら書き続けるシーンもそうだ。家庭教師に対する小さな反抗だ。 「夕暮れを完全に把握しました」 令和では、ドスの効いた声で 「おい、なめてんのか?」 なんて対応はしないだろう。 森田芳光監督がデフォルメして表現し、松田優作を使って壊してみせた「昭和のニュー家族像」は、40年経ったいま、違和感を生じないほどにその通りになった。 予言的中だ。 みんなで食事するのが大切だ、なんて言いながら、 会話は子どもの成績だけ。 なんて不毛な一家団欒は、令和のスタンダードだ。 残されたレガシーは、 ◆日本を代表するアクションスター松田優作が出演した稀少なホームコメディ作品という事実。 ◆自宅・学校・登下校路という限定された場面設定。 ◆体罰ok、個人情報の扱いの緩さ、スマホのない世界を味わえる。 公開当時のオトナたちが、本作の何に衝撃を受けたのか すでに分からなくなりつつある。 エポックメイキングであり、レトロな作品だ。
濃密
いまの視点で見ると、家族や友達との距離感が近くて濃密。殴り合ったり、顔を近づけたり。有名な横並びの食卓も、視線は合わないけれども距離は近くお互いが触れ合っている。 当時としては無機質な高層マンションという設定なのかな?湾岸にタワマンの並ぶいま見ると、なんて素朴で地に足のついたマンションかと思う。周りも空き地があり、土があり、生活の匂いがする。 食卓をぐちゃぐちゃにしたあとに、これをお母さんが一人で片付けるのかなあ?と思ったら、家族全員で片付けていてほのぼのした。残ってたワイン飲む気だし。 夕食にワインなんてずいぶんしゃれてたのでは。でも色が薄くて味がしなそうなワインだ。 松田優作がずっと持ってる植物図鑑は、私が子どもの頃に読んでいたやつだ!父は知ってて買ったのだろうか? 伊丹十三は半熟目玉焼きのエッセイがある。吸わないけど。食卓の前のスライドするワゴンに感心した。便利。 全体的に面白い映画だった。今の時代を森田芳光はどう描いただろう。SNSには友達のように仲の良い家族であふれている。幸福そうで、それは悪いことではないように思うけれども。
映像表現として斬新
森田芳光監督作品を観たのは遅くここ三、四年である。「それから」「黒い家」そして「39刑法第三十九条」の順であるが、最近「黒い家」「39刑法第三十九条」の二度目を一気呵成に観て、監督の出世作の「家族ゲーム」を観てみたくなり、観賞、そしてレビューまで書きたくなった。「39刑法第三十九条」の気味の悪い映像表現はほかのサイコサスペンスホラー映画を遙かに凌駕している。それでもしやと思ってこの「家族ゲーム」を観た。はるほどなと納得しました。天賦の才が監督にはあった。映像表現に関しては、小津安二郎監督の「東京物語」とは正反対の極みかもしれない。
やはり今観ても実に面白い
どこにでもあるような家庭の問題をシニカルに描いた怪作。 キャストが絶妙で、伊丹十三や由紀さおりがとても良い。 脇も豹柄のお姉さんに、戸川純とか皆キャラも立っているんですね。 何より飛び抜けて松田優作の色気がすごい。 絵作りが上手く、横一の食事風景や俯瞰で映される校庭、団地の乾いた感じなおどとても独特。 特に何度も映される印象的な食卓、“最後の晩餐”を思わせる食事のシーンは実に印象的。 音楽が全く無く、生活音のみというのも作品にあっていた。 役者の芝居が全部アドリブかのように枠に囚われておらず、実に自然に見えます。 植物図鑑に卵の食べ方等細かい所作にとても拘っており、本棚に飾られているガンプラも何故かジム。コブラツイスト(風の何か。カリ城の技に似ている。)ある種その狂気 「豊島園なら一番で入れますね」や、西武高校など、東映かな?(西武沿線的な)と思ったんですが日活なんですよね。 ラストの食事風景はカオスそのもので、まさに、“最後の晩餐”でしょうね。 そしてやはり最後の“次の戦いまでのひとときの安息”のようなシーンがとても印象的。 やはり今観ても実に面白い作品でした。
昭和の傑作
最後の晩餐のような食事シーンの構図 巧妙なカメラワーク カチャカチャと不快な音を多用する 宮川一朗太の思春期特有の拗らせた表情がなんとも言えず 昭和の 父、教師、年上の男が有無を言わさず偉いという 風潮をシニカルに描く。 家族という役割を演じるゲームを 壊す松田優作 傑作
内容的にはクスクス笑えるシーンが多かった。 家族4人+家庭教師が横...
内容的にはクスクス笑えるシーンが多かった。 家族4人+家庭教師が横一列に並んで食事をしていたのは、まるでコロナ対策ww 成績がクラス最下位の女の子は「ブス」と言われていたのに結構可愛かった。 長男の好きな女の子の家もおもしろかった。 デパートのような建物の化粧品売り場の奥が茶の間になっていて、さらにそこからエレベーターで上がったところに部屋があるという。 「ク〇垂れ流し事件」のエピソードも笑えた。 ただ、高校受験合格後の祝勝会で食べ物を粗末にした描写は今なら完全にアウトだ。 あと、ラストもよく分からない。 ヘリコプターの音がうるさいというくだりは何の意味があったのかな。
【お互いにキチンと向き合わない、どこかオカシナ家族を描いた、ブラックシュールでシニカルでアイロニックなコメディ映画。】
ー トニカク、ヌマタ家の夫婦と二人の息子、(特に高校受験を控えても成績の上がらないシゲユキ(宮川一朗太))が不気味と言って良いほど、どこかおかしい。ー <caution 内容に触れています。> ・シゲユキの成績を上げるために雇われた家庭教師、ヨシモト(松田優作)も相当、破天荒な男である。勉強をさぼるシゲユキに平手打ちを食らわしたり・・、プロレスの技を仕掛けたり・・。 ・シゲユキも冒頭から仮病を使って学校を休み、上手く行くと中学生とは思えない、嫌ーな笑いを浮かべる・・。 母親に"何歳ごろ生理が来たのか"、と、にや付きながら聞くシーンなどは・・。 ・夫(伊丹十三)は、成績成績と口やかましいが、全て妻任せ。 風呂で飲み物をチューチュー啜ったり、目玉焼きの黄身がチューチュー吸えない事に、怒る。 ー あの目玉焼きのシーンは、故伊丹氏自身の目玉焼きの食べ方について書いたエッセーがヒントだったのだろうか・・。ー ・妻(由紀さおり)は、夫の顔色を窺いつつ、表面上は子供たちの成績を気にしているが、シゲユキの志望校変更を、家庭教師のヨシモトに頼んだりしている・・。 ・隣の奥さん(戸川純! 後期、ゲルニカ好きだったなあ・・。)も、訳の分からない神経症的な態度を取るし・・。 - 戸川さん、そのままじゃない!スイマセン。- <有名な、横一列に並んだ、ヌマタ家の食卓シーン。 ここも、笑えるのではあるが、大笑いというよりは何故だか不気味さの方が勝るのである。 シゲユキが見事に第一志望の高校に合格したお祝いの席で、今度は父が優秀だった兄シュンイチの態度に腹を立てる。 と、それまでオカシナ食事の仕方をしていたヨシモトが、 ”家族の象徴ともいえる横長の食卓” を見事に縦にひっくり返し、卓上のご馳走をぶちまけて”ごちそうさまでした・・。”と言って去る。 一般的にこの作品はコメディ映画と謳われているが、久方振りに見返すと、ホラーテイストも十分にあると思った作品である。 ラストのヘリコプターが爆音を響かせる中、眠りについている兄弟の姿。 そして母もいつの間にか眠りについている。不穏極まりないラストである。>
不思議な魅力
どこがどう面白いっていう話でなく、なんとなく見入ってしまう不思議な作品。森田演出なのか、松田優作らキャストの魅力なのか。 何回も見た、これからも何度か見るかもな作品。 作品空気感が好きなのかもしれない。
傑作!
狂ってるなぁ~!どのシーンもカメラワークが不思議で心が不安になる。ラストの一列の食卓の長回しは圧巻。松田優作怖すぎ。宮川一朗太の顔可愛いし面白い。あと由紀さおりの平和ボケした母親感がとても上手い。森田芳光監督さすがすぎ。
映像で表現するとは?を教えてくれる映画
一番好きな映画は何ですか?と聞かれたら、家族ゲームと答えたい。それくらにツボに入った映画。 挿し込まれる広角の風景、寄りと引きの画角、回り込むカメラワーク、据え置いた長回しのカメラ。ローアングル、俯瞰のアングル、カットのリズムがとても心地よい。 最後の晩餐の構図で、父親の説教をよそに、家庭教師が暴飲暴食をエスカレートしていく場面は秀逸。家庭のシュールに観ていて、冷徹なようで風刺のようで、映像で表現することとは何かを教えてくれる映画。
夕暮れ
積木くずしも同じ年か。今見ると、親から離れて新たな形の家庭を持った戦後世代の自問のようにも思える。更に過去の家族のあり方を本当に美化できるかと言われれば、「いや、戻るのキツいっす」としか言えないその次の世代であったりする。家族の欺瞞さは古今東西変わらないようにも思ったりする。 ラストのヘリコプターの長回しはいいな。
よく分からなかった
長渕剛のドラマの方が記憶にある。勉強しない生徒を家庭教師が成績を上げるところが話の肝じゃない、良く言えばシュール、個人的感想は何だか分からないうちに終わった。宮川一朗太の演技だけが見所。
どれにも似ない新味。
再々…見。 宮川一朗太、気持ち悪くも愛くるしい男子、実はこれに尽きるかも。 これを森田芳光演出のもと絶妙の間で盛り立てる松田優作、伊丹十三、加藤善博ら。 前後のどれにも似ない新味は令和にこそ必見。
なんでテーブルひっくり返すの?
櫻井翔くんが主演でのドラマはちょっとだけ観たことあるくらいの知識で今作を観ました。 初めての松田優作でしたがイメージと違くて最初分かりませんでした。 コメディと言う割には笑うところが少ないように感じますが、シュール寄りなのですかね?
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