「距離感とデリカシーがバグってる」家族ゲーム てけと2さんの映画レビュー(感想・評価)
距離感とデリカシーがバグってる
嫌に近い密すぎる距離感の割に噛み合わない会話と空気感。お互いが相手に期待している内容や答えは生々しいくらいに見える表情や仕草を強調した演技なのにまったく通じあってる感じがしないのがもの凄く不快で違和感を感じさせる。
実に気持ち悪い。分かっちゃいたけど胸糞だ!どうしよーと思ったけれど最後の食事シーンにこれまでの家族関係を圧縮したうえでギャグして落としてくれた事で溜まった気持ち悪さを引きずらずに済みました。
お金で雇われた分の面倒はみるが家族の事は家の中で解決しろと言わんばかりのシーンで外から来た何者だか分からない人間に家族の問題を任せてしまう希薄な愛情と家庭のあり方を象徴しつつも、振り返ると家庭教師も自分の事には余り向き合えていない様だったので人間誰しも建前やよそ見をする方法にばかり目を向けがちなもんだよな。と、
登場人物はみんな短絡的で直線的なありふれた思考をしているけれど、言葉を投げた先に受け取り手がいない事。伝えるべき言葉を言わずに一般社会で思っていたとしても絶対伝えたりしない様な言葉をあえて受け取りたくなくなる様な台詞で伝える事。
違和感を煮詰めて煮詰めて、日常的に小さな不快音が大きく耳に付いてくるように積み重ねて何ともスッキリさせずに緊張感とストレスを山積みにしていくやり方にうわーっと思いながらもつい最後まで見てしまった。
全体な映像も結果や場面だけを突きつけてきて、間の流れや交流を見せない断片的なシーンの連続でそれに拍車をかけているし、そこに登場人物の関係性だけが分かりやすい構図が抒情的にも見える面白さがあってなんとも。
(結果だけで話たがる人って一見するとミステリアスだけど長く付き合うとだいぶイラつくのに似てる)
そんなこんなで最後の若干ファンタジーな説明の薄い終わり方にまで想像させる余白が生まれて落とし所が上手すぎると感心してしまいました。