「日常の風景」それでも夜は明ける 小二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
日常の風景
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ソロモンという一人の男性の過酷な実話。
酒飲んで朝起きたら奴隷になっていた…という何とも唐突な始まりから、地獄の12年間が続く。
そして結末もある意味、唐突にやってくる。
その始と結の唐突さは、生殺与奪権を白人が握っていた当時の実状そのものなのだろう。
自力で逃げ出したり仲間を助けたりそんなドラマティックな展開など許さない実状の理不尽さ、唐突さだった。
執拗な暴力描写が作中続く。
主人公が庭で首を吊られるシーンがあった。
主人公の後ろでは子供達が楽しそうに遊んでいる。白人がまるで木を眺めるように主人公をただ見ている。
日光が射し風が吹く美しい庭で、男は首を吊られている。それはとても美しい庭だった。
暴力描写が恐ろしいというより、そういった日常との対比が恐かった。
主人公にとって地獄でも、21世紀の観客の視点からみれば非道でも、当時の南部では日常の風景だ。
神を説き一見人の良さそうなフォード(カンバーバッチ)も、平気で奴隷を売買する。それが日常だから。それが当時の南部では多数派だから。
当時、自分が居合わせたらやはり日常に流されそうしていたのではないか。そう思うと、人の罪そのものを突きつけてくる映画のようにも見えてくる。
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