「感情が踊り出す超娯楽作!」インサイド・ヘッド showさんの映画レビュー(感想・評価)
感情が踊り出す超娯楽作!
ピクサーが「トイストーリー」を制作・公開してから20周年を記念して制作された、CGアニメを2D吹替版で鑑賞。
今回は11歳の女の子の頭の中の「感情」が主人公ということで、
一体どんな話になるのか期待と不安が半々だったのですが…、
ピクサー至上、BEST1の出来でした!
もうオープニングからひたすら号泣!
真夏の汗のように涙がだだ漏れ…。
目玉がもげるかと思いました。
CGアニメでここまで泣かされるなんて、「トイストーリー3」以来です。
となりが女子高生のグループだったので、34のおじさんがヒクヒク嗚咽を漏らして、かなり恥ずかしかったです。
さて本題…、
鑑賞前は、主人公の頭の中に住む感情「ヨロコビ」「カナシミ」「イカリ」「ビビリ」「イライラ」が、
それぞれの感情以外の感情を出してしまっては、
この世界観自体が台無しになってしまうのではないか、キャラクターがとても描きづらい題材だな、と危惧していたのですが、
そこを「成長」というファクターを通して描いていて、なるほど納得いきました。
初めはそれぞれの感情でのみ行動していたのに、
感情同時で影響しあい、それぞれの感情をも表現できるようになって、より深い人間形成がされていく…。
という、映画としての着地と11歳の少女の成長とが、うまくはまっていました。
また、「頭の中」という複雑な構造を至極わかりやすい世界観で表現しているので、
無駄なツッコミを考える余地なく「なるほど、具体化するとそうゆう感じになるのか」と納得できますし、
実生活上でも「幼少期の記憶でなぜかあのシーンだけ覚えてる!」とか「あの頃はハマってたけど、いつの間にか好きじゃなくなった趣味」とか、
そういった記憶のアレコレを観客がおのおのの体験をもとに咀嚼して追体験できる構造になっています。
また、登場人物によって、感情を指揮しているキャラクターが違うのも、よく考えられているところです。
ママの内面はカナシミが指揮をしていたり、パパの内面はイカリが指揮をしていたり。
それぞれの成長の中で核となる感情が次第に形成され、その影響を受けて現在の思考がなされている。
表現するのはとても複雑なはずなのに、具体的に明確にコミカルに視覚化しています。
邦題は「インサイド・ヘッド」ですが原題は「インサイド・アウト」というのも興味深いです。
「自分の内面が、環境・他者に影響をあたえる」という言葉で、
邦題よりもより深いテーマに感じられます。
実際に、主人公の内面が変化したことによって、状況がみるみる変化していきます。
それは環境や他者のせいではなく、主人公の感情が引き起こしています。
逆に、そうなるまでの主人公は、ヨロコビによって、無理に笑顔でいたり、無理にポジティブを装ったりと、精神的な負担が大きかったように感じます。
精神の崩壊と再生を、こんなにもわかりやすく、具体的かつコミカルに描けるなんて、
脚本家・監督の手腕は、まさにアカデミー賞ものだと思います。
また、「少女の成長」という題材に、鑑賞中「千と千尋の神隠し」を連想してしまいました。
全くアプローチは違いますが、境遇や着地点など共通する箇所があり、もしかしたら影響を受けて創ったのでは、と勘ぐってしまいました。
今回は一見すると、かなり大人向きに創られている印象ですが、
脳内のハチャメチャ感や、起こる出来事の数々は理解不能なドラッグ映画のようなので、
子どもにもハマる要素は満載です。
この夏、ぜひ親子で観に行って、
鑑賞後はお子様をギューと抱きしめてあげてください。