「新しくてクラシカル」胸騒ぎの恋人 小二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
新しくてクラシカル
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グザヴィエ・ドランの監督・脚本・主演作。
自分の事を延々と映し続けて、どんだけナルシストなの?と思うけれど、その「延々」がそこはかとなく滑稽で、可笑しい。自分を滑稽に撮れるということは、ナルシストの一方で、ものすごく客観的に冷静に撮っているということでもある。(「マイ・マザー」の時もそう思った。)
そしてこの滑稽さは、彼自身のものだけではなく、恋する人皆に共通するような、滑稽さでもある。(「オレは、こんなかっこ悪い恋はしない」という人は、どちらかというと恋を客観視できない人と思う。)
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色使いや構図などフレッシュで若々しい。新しいなあと思わせる一方で、どこかクラシカル。手紙・電話などの小道具も、流れている曲も、ちょっと昔っぽい。
間違いなく現代の若い人が撮った映画なんだけど、三十年前に撮られた映画ですって言われたら、「そーかもねー」と思わず納得してしまいそうな、時代不明な映画でもある。
オム・ファタルの撮り方(コクトーと重ねる所がカッコ良過ぎて笑う)もクラシカル。グザヴィエ・ドランなら、オム・ファタルの古典コレットの「シェリ」も上手く撮れるんじゃないか、とすら思う。
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ナルシストでありつつ客観的な、アバンギャルドでありつつクラシカルな、相反する魅力が詰まった映画と思う。
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追記:「Bang Bang」という歌が非常に印象的に使われている。
タランティーノやオゾンの映画でも使われており、手垢のついた曲にもかかわらず、この映画のための歌と感じさせてしまうあたりも、ドラン憎いねえと思う。
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