「監督が魅力たっぷり」ホドロフスキーのDUNE 古泉智浩さんの映画レビュー(感想・評価)
監督が魅力たっぷり
ホドロフスキー監督がとにかく元気で、明るくて人たらしであることがとてもよく分かった。てっきり暗い変人の芸術家だと思っていたら全然違った。
そして壮大なテーマや志を抱いて『DUNE』に取り組んでいた事がとても感動的だった。『DUNE』に必要な魂の戦士を集めようとしていて、『アストロ球団』みたいだった。そんな監督に映画を作らせなかったハリウッドはクソだと思った。ジョン・レノンに出資してもらえばよかったのではないだろうか。
監督は『DUNE』のために腕を切り落とすなら落としてもいいとすごい覚悟を明るく語っていた。
オレも漫画に長年取り組んでいるのだが、果たしてそれほど全力で製作に取り組んできたかと言えば全くノーである。ずっとぬるい漫画しか描いておらず、そうでなければ長く続けられなかったということを言い訳にする始末で、この先もきっとそのままだ。そうして、一度も全力を出し切ることなく生涯を終えていくのだろうと思うと恥ずかしい気持ちになった。
いつか命を懸けて取り組むべきテーマを見つけてみたいものだ。
(追記)
改めて2回目見て気づいた事。
監督は魂の戦士を集めて映画を作ろうとしていた。それは、才能に対する絶大な信頼だと思う。よくよく考えてみると、オレは自分の才能も他人の才能もあまり信じていないところがある。芸術などの表現は、いうなれば「世界にひとつだけの花」であり、誰でもその人なりの表現ができれば素晴らしい花がひらくのではないかと思っている。結果として上手に花が開かない場合があったとしても、何のきっかけで開くかどうか分からない。自分が漫画家として受け入れてもらえているのも、もちろん努力している部分はあるにせよ、たまたまなような気がする。自分の才能もあまり信じてない。
しかし、人を圧倒する才能というのは実際にあり、それに信じる気持ちが強いことは、更なる素晴らしい表現につながりそうである。そして自分の才能をナルシスティックに信じることができた方が余計に魅力的な作品をつくることができると思う。
そんなことを2回目で思った。