「開き直り・・」ホドロフスキーのDUNE odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
開き直り・・
製作中止映画のメイキングをドキュメンタリーにするというのも風変り、少しは赤字の補てんに見込めると思ったのか、ハリウッドに一矢報いねば気が済まなかったのか?
動機に興味を惹かれ鑑賞、概ね、想像通り、根っこはホドロフスキー監督の自画自賛と恨み節でした。何故、頓挫から35年も経って本作を作ったのか、時代が変わり再評価の兆し、プロデューサーだったミシェル・セイドゥーとホドロフスキー監督が再度タッグを組んだ「リアリティのダンス(2013)」の公開もあり汚名返上、名誉挽回の好機と思ったのかもしれませんね。
彼の話を聞くにつけ、まるで新興宗教の教祖の様、彼にとって映画とは布教活動のようなものなのかもしれない。古代仏教が求道の動機づけとして六道絵の地獄絵図を用いたように恐怖と狂気の具現化が不可欠だったのでしょう。ただ現代では説得力に欠けるので近未来を想定したSFは格好の舞台と「砂の惑星」に目を付けたのでしょう、原作未読と開き直って都合よく改変、欲しいのはシチュエーションだったことは明らかです。
先ずはそのための絵師や特撮技師集めに奔走する、キャスティングもしかり、灰汁の強さが最優先、こだわりは建物から衣装まで微に入り細にわたる。
ハリウッドのメジャーに彼の狂気性は受け入れられなかったものの構想や詳細な絵コンテなどの副産物はその後のSF映画に多大な影響、刺激を与えたことは事実、納得です。
好き嫌いは別として監督のこだわりと熱意は伝わりますし巨匠黒澤監督も無理難題でスタッフを困らせたと言う逸話には事欠きません、かと言ってハリウッドの指摘もあながち不条理とは言い切れないから受け止めは微妙です。
幻の本編を観てみたかったかというと興味は湧きますが劇中で出てきた手足を切断する拷問のシーンなど余りにグロテスクだし、本気とは思えませんが12時間の長尺では一挙上映鑑賞は無理筋です・・。