「泣きそうになりました。」ホドロフスキーのDUNE nagiさんの映画レビュー(感想・評価)
泣きそうになりました。
泣きそうになったのは、全く個人的な理由であるからなのだが、このレビューも殆ど自分の覚書のような形で綴っている訳なのであるから、胸に秘めずに書いておく事にしよう。
やや大袈裟に言えば、つまり、この『DUNE』が、自らの感性を丸ごと包含してしまうほどの壮大さをもっていたからである。
私は映画に限らず、美術や音楽も好むのだが、始まりは「ダリ」であった。ダリの作品に出会い、様々な文化に手足を伸ばしてきたのである。ダリの展覧会があれば足を伸ばし、シュルレアリスムを個人的に探求し『1984』などのユートピア論からニーチェへ、N.W.レフンやツァラトゥストラを経てホドロフスキーへと遂に辿り着いた。
シュルレアリスムからPink Floydへ、所謂プログレを知った。五大プログレに骨抜きにされ、MAGMAの悪魔的音楽に圧倒され、EL&PからH.R.ギーガーの暗黒の虜となった。H.R.ギーガーは『エイリアン』やKORNのジョナサン・デイヴィスのマイクスタンドのデザインなどで有名だ。
SF映画は特に好み『2001年宇宙の旅』『ブレード・ランナー』は、この世における最も偉大な映像作品であるとまで(半分狂信的な神格化であるが...)考えていた。
その全てが『DUNE』に、帰結していた。これ程の運命的な偶然、いや、これはホドロフスキーによる理想的必然だが、私にはずっと探していた真理を探し当てたような、それ程の衝撃だったのである。私はこの作品をもう生涯誰にも勧めることはない。何故なら、私の感性の全てを90分で俯瞰されてしまうかのようだからだ。実際にそんな事は無いだろうと自分でも思いたいが、僕はこの作品を未完でありながらも生涯の傑作に位置付けたいと思っている。N.W.レフンは唯一の観客だと言っていたが、身悶えするほどのジェラシー。
しかし希望は残されており「位置付けたいと思っている」というのは、私の尊敬してやまない現代SF界で圧倒的な才能のある、ドゥニ・ヴィルヌーヴによるリブート計画が進行している事である。『メッセージ』や『ブレードランナー2049』の大ヒットは記憶に新しいし『灼熱の魂』は私のお気に入りの1作である。ホドロフスキーの絶たれた夢を、死して人類の超克を成し遂げたピートよろしく、受け継いで頂きたく、過剰すぎるほどの期待を寄せているのである。