「人間ドラマとしてのJFK暗殺」パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間 お転婆さんさんの映画レビュー(感想・評価)
人間ドラマとしてのJFK暗殺
パークランドとは、病院の名前。ダラスにあるこの病院は、一週間足らずのうちに20世紀きってのビッグネーム2人の患者を見ることになる。1963年11月22日にはアメリカ35代大統領ジョン・フィッツジェラルド・ケネディ、その2日後にはその暗殺実行犯と言われたリー・ハーヴェイ・オズワルド。
2人とも銃弾によって瀕死の状態で運ばれてきた急患であり、医師団には絶対の救命措置が要求された。前者には国の尊厳のため、後者には自白のため。
そして医師団、FBI、テキサス州警察、ジャーナリズムの間には短時間の間に凄まじい確執が生まれる。自分たちの意地と存在価値を賭けて。その濃密なありさまの描写を、ドキュメンタリー・タッチのようにカメラは淡々と追っていく。それだけにそこに流れるエネルギーの熱さがより感じられてぞくぞくする。
そしてもう1人、リー・ハーヴェイの兄ロバート。家族でありながらも冷静さを保ち、自分が取るべき態度、すべき行為を感情を必死に抑え込んで逐一こなしていくその様子には、見ている方も感極まってしまいそうになる。
事実かどうかわからないが、リー・ハーヴェイが粗末な棺に納められ、あちこち断られた末やっとツテを辿って許可された墓地に向かう途中、ラジオからは国葬としてアーリントンに葬られるJFKの葬儀の模様が中継されていた。
教会での祈りも断られ、ボランティアでやってきた牧師の祈祷が終わり、ロバートは集まっていたジャーナリストに一緒に墓穴を掘ることを懇願する。一人、また一人カメラを置いて、上着を脱いで、穴を掘る彼らを見て、墓掘り人夫もやっと参加する(もちろんアフリカ系だ)
そこには、あちこちで自我を否定されてきたであろうリー・ハーヴェイが、やっと他人からの尊厳を持ってもらった一瞬だったのかもしれない。