「冒頭から備えよ。」プリズナーズ ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
冒頭から備えよ。
153分の長尺と聞いただけで、大概嫌な予感がするものだけど
今回はどうしても観たい作品だったので、一本(普段は二本)で
観に行った。観終えて…いや~お腹一杯^^;非常に面白かった。
まぁ題材からして、スッキリサッパリの爽やか系ではないうえ、
酷い拷問シーンやら蛇やらフリーメイソンやらロリコン?やら…
キモイのがたーくさん出てくるんで…嫌いな方はご用心ください。
明るいのは冒頭のみ、あとは終始重く辛く寒い極限が広がります。
だけど本当に…恐ろしく感じるのは、
あったじゃないですか!日本にだって、こういう誘拐・失踪事件。
例えば犬の散歩途中に忽然と姿を消した少女。
何日か後に無事保護されたのは良かったけれど、見つかるまでの
ご両親の憔悴、そして事件の真相に至るまで恐ろしいことばかり。
とても他人事とは思えないところが、まずはこの事件の肝。
厳格な父親ケラー(ヒュー)の一人娘が友人と共に忽然と姿を消し、
地元警察が怪しい青年を尋問するが一向に決め手が見つからない。
容疑者アレックス(ポール)は10歳程度の知能しか持っておらず、
証拠が掴めない警察は彼を釈放する。が、彼に疑いを抱くケラーは
アレックスを逆誘拐し、拉致・監禁・拷問に踏み切る。その間も
担当刑事ロキ(ジェイク)は犯人探しを黙々と進めるのだったが…
まぁとにかく(長いんだけど、その)長さを感じさせない巧い脚本。
観客をどんどん事件の闇に引き込み、謎を振りまいて蹴散らす。
真犯人はどいつだ?やっぱりこいつなのか?いや…違うのか?と
最後の最後まで掴みどころのない謎深さ。演じる俳優もさすがで、
どの場面のどの描写をとっても抜かりがない。憔悴していく家族と
血まみれになって闘う父親。もう正義もへったくれもありゃしない。
とにかく早く犯人を割り出してくれ!でないと誰かがまた死ぬぞ!
観客はもう冷や汗タラタラ。
そして後半。えーっ!!とビックリ仰天すること請け合いなのだが、
さぁ種明かし…冒頭からあちこちに撒かれてきた伏線の全体回収。
あーそうか。あーそうだったか。と頭の中はな~るほどザ・ワールド!
この脚本、完全オリジナルというから大したものだ。
確かに後半で、エ、そんなことできるワケが?なんて思いもするが、
あの犯人だから、できたワケなんですよ。つまりここで、
「常に備えよ」←(冒頭でケラーが息子にいう言葉)が活きてくるのだ。
これ、今作では全ての人間に共通していた言葉だったんだな。
備えあれば憂いなし。なんて日本人もよく言うけど、漠然とそれを
遂行してたんじゃダメなのね。常に最悪の場合に備える万事態勢。
ほんのちょっとの見落としが、大惨事に繋がるといういい例だった。
最後の最後は予想できたけど、いやしかし、恐ろしいのに面白かった。
ところでふと考えた。いちばん可哀想だったのって…果たして誰だ?
私は間違いなくあの人だと思うんですけどねぇ^^;
(しかしジェイクのお腹の出っ張り具合、良いんだわ~玄人っぽくて)