「観賞して、アニメションは芸術品であり、世界を制覇できるエンターテイメントでもあると体感」風の谷のナウシカ Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
観賞して、アニメションは芸術品であり、世界を制覇できるエンターテイメントでもあると体感
宮崎駿監督による1984年製作の日本映画。
配給は東映。
公開時に映画館で見れたのは今から思えば幸い。
従来のアニメ映画の枠を飛び越えたというか、オープニング画像と音楽(風の伝節)だけでその芸術性に圧倒され、気持ち的には正座で座り直して見た記憶が有る。
まず、ナウシカの乗る小型飛行用装置(メーヴェ)のスピード感と滑空感にぶっ飛び。この映像だけでも凄いと唸らされた。
そして、ナウシカが、怯えきったキツネリスの「テト」に声かけをしながら指を噛噛ませる場面には、島本須美の落ち着いた美しい声とともに、随分と感心させられた。
オームの造形と暴走時の大迫力、それを止めようとして跳ね飛ばされるナウシカの姿。そしてオームと金色の触手を通じて感情的な交流をするナウシカ、今まで見たことが無い彩色の美しい映像、そこに官能的な音楽ナウシカ・レクイエムが相まって、陶然とする体験となった。
普段は冷静なナウシカが、トルメキア軍に父を殺されたことで、怒りに我を忘れて、トルメキア兵士5名をあっという間に殺してしまう描写には、人間のそして戦争の本質的部分を抉っていて、痛く感心させられた。
アニメ表現としてはオームの目のレンズのプラストックの様な透明で硬度が有りながら、しなやかな質感の表現が凄くて素晴らしいと思った。
ナウシカが地下室の部屋で腐海の植物を研究している描写にはビックリ。それが、腐海の深部に落ちた時、腐海の植物が汚染された土壌の毒を取り込んで浄化していること、この世界での希望の発見の気づきに繋がる。科学するお姫様のヒロイン像は実に新鮮に感じた。
個々の曲のみならず全編を通して、久石譲による音楽は素晴らしく、言わばナウシカ交響曲となっており、その構成力にも脱帽させられた。好きになりすぎて、後日この映画の音楽全曲のピアノ楽譜集も購入し、演奏をトライした。
原作は事前に読んでおらず、テーマ全体は大きすぎて十分には評価できずにいたが、個々のシーンの素晴らしさ想像性の高さ・豊かさに、大きな感動を覚えた。エンタテインメントと芸術性の調和も見事で、世界のトップに立てる様な作品と思い、日本からこの作品が生まれたことに大いなる誇りを感じたことを覚えている。残念ながら、この作品自体では当時、海外展開は十分にできなかったのだが。
原作宮崎駿、脚本宮崎駿、製作徳間康快、近藤道生。
プロデューサー高畑勲、企画山下辰巳、奥本篤志、尾形英夫、森江宏。
作画監督小松原一男、原画金田伊功、吉田忠義、 福田忠、丹内司、 鍋島修、賀川愛、なかむらたかし、小林一幸、高坂希太郎、羽根章悦、小原秀一、庵野秀明、小田部羊一、 才田俊次 高野登、池田淳子、渡部高志、富山正治、林貴則。撮影白神孝治、首藤行朝、清水泰弘、杉浦守、美術監督中村光毅、編集木田伴子、金子尚樹、酒井正次、音楽久石譲、音響監督斯波重治、テーマソング安田成美、アニメーション制作トップクラフト。
声優は島本須美(ナウシカ)、辻村真人(ジル)、京田尚子大(ババ)、
納谷悟朗(ユパ)、永井一郎(ミト)、宮内幸平(ゴル)、八奈見乗児(ギックリ)、矢田稔(ニガ)