「カイエンとパナメーラ」風の谷のナウシカ pipiさんの映画レビュー(感想・評価)
カイエンとパナメーラ
本作の評価は非常に困る。
「風の谷のナウシカ」という名作は、決してこの映画のような浅い内容ではないからだ。
当時、テレコムを退職しフリーとなった宮﨑がナウシカの漫画連載以外仕事がない苦境にある事を知ったメージュ(アニメージュ)初代編集長・緒方英夫がアニメ化を企画した。
つまり、宮﨑の生活を守り、その才能を潰さない為の救済策がこの映画だ。
(まだジブリありません)
仕方ないから、原作は3巻の頭辺りで休載し、アニメ制作が始まった。
少しでも原作を読んで貰えばわかるが、本作は「起承転結」の「起」に過ぎず、この部分だけでは世界観を充分に伝える事は出来ないし、そもそも最初から感動を呼ぶほどのエピソードでもないのだ。(「起」だからね。)
しかし、序盤は結構一コマ一コマ原作に忠実に作ってある。これがかえってSFやファンタシーに馴染みの薄い観客には理解しにくいものにしてしまった。
クシャナやクロトワは魅力を充分に描ききれず敵(かたき)役止まりに甘んじているし(「憎めない悪党」程度にしか見えないのだとしたら、この映画はやはり失敗である)細かい改変や予定調和のラストも面白味に欠ける。
(私ゃ クロトワ大好きなんでね。削りまくられた台詞の中で、クロトワらしさを少しでも魅せてくれた家弓 家正さん。本当にありがとう!)
だったらいっそ、もっと思いっきり手を加えて、原作の主題を描き込んだ2時間モノの別ストーリーにしてしまえば良かったかもしれないのだが、それはまぁ、今だからこそ言えること。
当時の宮崎駿氏には、あれが実力の限界だったのだろう。
まぁ、だからこそ「もののけ姫」がナウシカのリベンジであり、宮崎が「ジブリを使い潰す覚悟」で予算も労力も限界まで投入した大作となったのだが。
しかし、宮崎という稀有な才能を育てようとする尾形編集長の情熱は凄かった。徳間康快社長を説き伏せ、トップ交渉にて博報堂の全面協力。東映の社長も巻き込んでの最強布陣による宣伝活動。
製作陣も、高畑勲&宮崎駿の神タッグの下、小松原 一男、金田 伊功、庵野 秀明など、錚々たる才能が集結している。
音楽・音響にはBOØWYの布袋 寅泰、YMOの細野 晴臣も参加。坂本龍一教授も打診されていたが、久石 譲という才能を見出した事で、久石が本編を担当。
安田成美は7600人からのコンテストを勝ち上がり抜擢される。
凡作にはなりようがないのだ。
しかし、例えるならポルシェにとってカイエンやパナメーラやマカンは「作りたくて作っているのか?」「あんなものはポルシェなのか?」という話だ。
ケイマンやボクスターならばまだしも、SUVやセダンというのは「純血のスポーツカー」の誇りをかなぐり捨て、ポルシェというブランドへの羨望をくすぐって顧客の間口を広げ「金を落として貰う」為の施策ではないか。
しかし、その収入があってこそ、初めて「本当に創りたいものの開発が出来る」とあっては、カイエン買ってくれた人ありがとう、と言うしかない。
自然破壊、文明破壊、戦争批判、自然と科学技術の対立。というテーマを評価するべきか?(そんな作品は82年以前からいくらでもある。)
当時のアニメーション技術の粋を集結した、、、とも言えないし。(各アニメスタジオ、みんな先に仕事抱えてたし。コネで頼まれても、お手伝い程度しか余力を割けなかったのよ)
でもレベルの高い作品には違いないし・・・。
84年封切り時に映画館で鑑賞したが、さほど感銘を受けることがなかったのも事実である。
ナウシカ同様アニメグランプリ受賞作と比較するならば、テーマ性の壮大さでは、イデオンやさよなら999、ゴッドマーズの方が深いし、物語性に関してはスーパーロボットからリアル性の高いロボットの転換を成し遂げたガンダムやスペースオペラの草分けクラッシャージョーの成し得た功績は大きい。
ナウシカも、これらに充分比肩するものではあるが、凌駕するとまでは思わない。(アニメーション技術は、もちろん後発のナウシカの方が向上している。)
鑑賞者のバックグラウンドがバラバラなサイトの評価がバラバラになるのは当然だが、個人的には「惜しい!」作品であった。
この映画がお好きならばぜひ漫画もお読み頂きたい。
「風の谷のナウシカ」という作品を益々好きになれる事と思う。
【覚書】
1984.3.11
今はなき渋谷東急(東急文化会館)にて鑑賞
私には「安田成美さんのテーマ曲(?)」だけで、充分に感動ものです。(映画では流れなかったらしいけど、それさえ気づいてなかった・・・)
原作は読みましたよ! それはそれでおもしろかったです。
ただ、コロナの時期に上映があって、昔の感動は何だったの?と、思ったのは事実ですが。
返信ありがとうございました。
ナウシカ歌舞伎はチケット取れなかったので、ナマ舞台は見てないですが、さすが松竹、映像化してちゃっかり映画館で上映しました。
ワンピースもシネマ歌舞伎で見ました。
あと、ナウシカはBSプレミアムで2回放送してました。
また放送するんじゃないでしょうか。
機会があったら歌舞伎版も見ていただきたいです。
本気で原作を舞台にしたので。
ナウシカはおじさんが女装してますけど…。
でも、クシャナはイケてます。
クロトワもたくさん出てます。
コメントありがとうございます。
「ナウシカ」は長い物語の序盤だということ、
「岡田斗司夫ゼミ」(無料版)で知った程度の
「ナウシカ弱者」なのでいっそのこと、
銀英伝なみに全話、新たに作って欲しい気持ちです。
それにしても「銀英伝」の続きはどうなるんでしょうね?
楽しみにしてるのですが新作がメガヒットとまでは行かなかったので
まさかここまで??ちょっと不安。
こちらは全話小説も読んだし、以前のテレビアニメは
全部録画してあるので思い入れは「ナウシカ」より強いのでが
ちょうど映画館で公開されてた頃は遠くの映画館でしか
上映していなくて後追いでdアニメでせっせと観ました。
新作のキャラを初めて見たときは
なんかラインハルト様が軽い!と感じましたが
慣れてしまえば、若い時から貫禄ありすぎは
確かにちょっと変だな~と今は思えます。
にしても、ミラクル・ヤンはカッコ良くなり過ぎですね。(笑)
ぐうたら感がちょっと足りないかも~
それでも続きを楽しみしてます。
コメントありがとうございます!
そういう事だったのですね。残念だと思う人がいてくれてすごく安心しました笑
起承転結の「起」。なるほど。
面白いレビュー&コメント、為になりました!!
庵野作品のレビューも楽しみにしています😆
「キマイラ」の企画はまだ生きているのでしょうか…。3年くらいなんの音沙汰も無いし、押井さんは「ぶらどらぶ」とかいう変なTVアニメを作り始めるし…。
何か続報が欲しいところですね🤔
庵野作品は自分も苦手というか嫌いなジャンルだったのですが、『シン・ゴジラ』や『シン・エヴァ』では完全に「セカイ系」からの脱却を果たしております。90年代の庵野さんからは信じられないほど、作家として成長していると思います!
押井守は割と好きな監督なので(あくまで「アニメ監督」としてはですが😅)、もっとアニメ映画作って欲しいなぁ、と思っている次第です!
庵野秀明は『クシャナ戦記』という企画を考えていたとかっていうアレですね!
庵野さんは『巨神兵東京に現わる』で一応ナウシカをリブートさせたので、もうナウシカには興味ないんじゃないかな、とか思っているのですが、もし実現したら燃えますね!
最終巻の内容だけ映像化したいと思っているという話も聞きますし、カラー主導で「序破急シン」を作ってくれないかなぁ✨
詳しすぎ!
2巻までだと思ってたけど、3巻も出来てたのですね。
映画見てから読ませてもらったけど、漫画のほうは理解に苦しみました。
多分、当時の大勢の男子はナウシカがノーパンじゃないかと心臓がどきどきしたに違いない。
pipiさん、コメントありがとうございます😊
原作派からすると、もっと凄い映画が作れただろっ!と思ってしまって、なんとも居たたまれない気分になってしまいます。
勿論、これか当時の宮崎監督にとってのベストワークだということは重々承知しているのですが…。
だからこそ、『ナウシカ2』が作られることを期待してしまうのですが、こういうのはコンシューマーのエゴですよねぇ😅