劇場公開日 1984年3月11日

「劇場で味わう圧倒的なスケールと世界観」風の谷のナウシカ moviebuffさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5劇場で味わう圧倒的なスケールと世界観

2020年6月29日
PCから投稿

よく考えたら、並みの大衆作家ならこれだけの世界を構築する事に成功したら、それで満足し、スターウォーズやロードオブザリングのように長編でライフワークとして何度も語り直すことも、やろうと思えば出来たはずだ。というかほとんどの作家というのはそういうもんだと思う。

実際それもやろうと思えば可能なだけの情報量がこの作品には詰め込まれている。ペジテ、トルメキアとの地理的な関係性(漫画ではさらに複雑)、風の谷の人々の生活様式、腐海の植物、動物の生態系、様々なデザインの兵器や武器、工具、道具、衣装。過去にあった7日間戦争の伝説と遺跡。本当にそこに思いをはせるだけでも、一つ一つが魅力的なのだ。

2000年代以降の超大国の台頭とそれが生み出す小国との様々な緊張関係、民族紛争、2011年の原発事故、2020年のコロナウィルスの世界的流行。。21世紀になってから、現代の問題とナウシカの世界が以前よりもより重なりあい、子供の時見たナウシカよりも、むしろ今の方が生々しくメッセージ性が伝わるように思える。宮崎駿という作家は世界史からの学び、生態系、異文化への関心を通して世界を凡人よりも、長期的で広大なスケールで昔から見ていたのだとよくわかった。

その博学な知識から新しいファンタジーの世界を自分で毎回作り出し、監督しアニメーションも自分で描ける。。構想、原作、脚本、演出、監督全部俺。そんな化け物みたいな才能を持っている人が国民作家になったのは、当然なのかもしれない。

劇場で見る事のメリットの一つを付け加えると、音の迫力があるだろう。今までのテレビ鑑賞では気づかなかった音楽のディティールを味わう事ができる。当時の久石譲は今と違い、オーケストラだけでなく、様々なシンセサイザーの音を駆使して楽曲を提供しており(無論そこには予算的な理由はあるとは思うが)、それもナウシカ独特のムードを作りだしている。クライマックスの感動も大画面と壮大な音楽によって、テレビで見るより何十倍にも大きく味わう事が出来た。

moviebuff