劇場公開日 1984年3月11日

「今更ながらに思うこと」風の谷のナウシカ グレシャムの法則さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0今更ながらに思うこと

2020年6月27日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

もう何回も観てるからな、と思ってたのですが、映画館で観るのは初めてということで日比谷まで足を運びました。

見覚えのあるシーンばかりなのに、とても新鮮でした。テレビの画面では顔全体の雰囲気で分かった気になってましたが、大画面だと、〝顔〟を見る時も、目やちょっとした口角の上げ下げが個別に捉えられ、ナウシカの怒りに駆られた格闘シーンやその後の、自分への怯えなども鮮やかにそして明らかに伝わってきます。王蟲の金色の触手の一本一本にもテレビ画面で見るよりずっと〝意思〟が感じられました。

映画館の大画面だから、という自己暗示による特殊効果かもしれませんが、私にはとても貴重な体験でした。

穿った見方かもしれませんが、宮崎駿監督の作品では、一般的な成年男子、20代〜40代の〝デキル男〟は殆ど登場しませんね。
ユパのような達人は別にして、男性で活躍するのはちょっと大人気ないヤンチャさの残る、だけど自分というものをきちんとわきまえている高齢者や、まだ少年といった方が似合うこれから大人になろうという年頃の青年がメインです。
しっかりとしたリーダーシップを発揮する大人は、魔女だったり、クシャナだったり、タタラ場の村のエボシだったり、盗賊団の親玉だったりで、ほぼ芯の強い女性ばかりです。
唯一、社会を引っ張っていけそうな資質を備えてる(ように私には見える)成年男子であるマルコは、半分世捨て人?の豚になっちゃうし。
数少ない立派な成年男子の殆どは炭鉱や風呂釜やパン屋の技術屋や職人で、社会的政治的リーダーシップを発揮する人は(たぶん)いない。

宮崎駿監督にとっては、自然との共生と程遠い、こんなダメな世の中を作ってきた権力者や成年男子への抜き難い不信感が底流にあるのではないでしょうか。
経済的な欲得や権力争いに血道を上げる男どもへの嫌悪感が相当にあるのではないかと私には思えるのです。
キキのお父さんも、サツキやメイのお父さんも、成年男子ではあるけれど、欲得や出世争いなどとは縁が遠そうでした。

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グレシャムの法則