「ごめんね、酷すぎるよね、許してなんて言えないよね、」風の谷のナウシカ KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
ごめんね、酷すぎるよね、許してなんて言えないよね、
幼い頃から繰り返し繰り返し何回も何回もビデオで観てきた作品。
改めてこの世界の設定、トルメキア軍とペジテ側それぞれの思惑と目的、ナウシカの行動の意味など諸々確認しつつ大号泣しつつ、初の劇場鑑賞。感無量。
ナウシカは自然や人々に対する慈愛が深く谷の民から厚く愛されているけど、決して完全無欠の神ではない。
好奇心に富み溢れる怒りや興奮の感情を見せて時に猪突猛進する一人の娘として描かれているところが好き。
谷の民を守るために奮闘する姿のかっこよさ。
蟲や動物と心通わす姿の美しさ。
しなやかな身のこなし、凛と張った態度。
何かとリアクションするときの声。
彼女に憧れるあまり、真似しまくって糸の先に熊手的な物を付けてブンブン振り回したり短剣の代わりに金串を壁に突き刺していた時を思い出す。危険すぎて怒られてたな。
今でもメーヴェに乗って空を飛び回る夢は諦めていない。
腐海探検をするナウシカの全ての仕草が好き。午後の胞子が雪みたい。
王蟲の抜け殻にいきなり力いっぱい刃を立てるとこ好き。
テトとの初対面のやり取りが好き。怯えていただけなんだよね。ほら怖くない。ウフフ
濃い瘴気の中マスクを外し、城オジ達を助けるため声を張ってサムズアップするナウシカが好き。
足でハンドルを操作しているのも好き。
不時着しかける船の中のラステルと目が合うシーンが好き。鳥肌。
胸元のボタンを外したとき、何が見えたんだろう。凄惨な傷か。
アスベルや囮王蟲を釣っていた男性が、攻撃の最中に身を賭して止めようとするナウシカにラステルを重ねていたところが好き。
きっとラステルも自国で同じように優しく皆に慕われる存在だったんだろう。
二人の王女が重なると胸がいっぱいになる。
アスベルの「味はともかく、長靴いっぱい食べたいよ!」が好き。
ペジテの長に背きナウシカを助けようとする姿のなんとかっこいいこと。惚れる。好き。
ガンシップで襲う目つきの鋭さも好きだし腐海の地下での砕けた態度も好き。
クシャナ殿下が捕えから逃げ、崖のようなところを登り進む際の、金属の足が砂面にめり込み少し沈むのが好き。
タヌキ…ではなくクロトワ参謀の「短ぇ夢だったぜ」が好き。
巨神兵が来る直前、迫る王蟲の群に恐れをなした兵隊が次々逃げて行くの好き。
トルメキア側も完全なる侵略者や制覇目的というより、自分たちが長く生き延びるために見つけた策にはまって過激になっているように思える。
戦争の原因って小さいことが多いじゃない。
特にクシャナは立場ならではのジレンマも抱えていて、そのやり口は好きになれないけどキャラクター自体は好き。
トルメキアとペジテ、やることはどちらも非道。
手は違えど目的や思想は似通っていて、その極端さに頭が痛くなる。
しかしそれを完全に責め立てられない。
自分だけ可愛い気持ちは誰でも持つもの。
だからこそ、そうでないナウシカに皆惹かれるんだと思う。
ユパ様の腕に剣が刺さってしまうところ好き。痛い。ごめんなさい。好き。
大ババ様の「その物青き衣を纏いて金色の野に降り立つべし」の言い方が好き。
城オジ三人衆のコミカルな言動、特に戦車を乗っ取った際の「わしゃギックリ腰」「わかっとるがなもう」が好き。
「働き者の綺麗な手」の話が好き。
子供の合言葉のやり取りが好き。
「風」「たにぃぃ!!」昔は「カニ!!」って言っていると思っていた。そんなわけない。
いままで築き上げてきたもの、平和な日常が崩されていく様がショッキング。
たくさんの人や生き物が死んでいる。
風車や塔が壊され、大切な森に菌糸が蔓延ってしまうやるせなさ。
ひとつひとつどうしようもない事が起こる度に心が沈んでいき、どうにかできないかと思った。
人と人の争いもだけど、蟲たちによる襲来もなかなかの恐怖。
朽ち果てたペジテの惨い様。
大地の怒りの権化となった王蟲の群れのなんと多いこと。
たった一匹の子供のために!?とも思うが、その仲間意識の強さと繋がりの意識に感銘。
そして最大の肝である巨神兵。
どういう仕組みかわからないが一吹きで絶大な威力の火の攻撃。王蟲が弾けるたびに苦しくなった。
ドロドロと溶けゆく身体と顔が気持ち悪くてゾワゾワする。
あんなのが何人も正常に動いてた時代なんて。
核兵器の比喩なのかな。
今なおいくつかの国に眠る奴らなんて地の底で死んでくれればいいのに。
そして攻撃に攻撃を返すのではなく、真っ当な方法で還すナウシカにまた胸打たれる。
当たり前の方法なのに。でも他の誰かが同じことをしても王蟲たちは止まらなかったと思う。
王蟲の体液の染み込んだ服、とても素敵な深いブルーで好き。
真っ赤だった目が青く染まっていくところがとても好き。あの金色の触手も。
腐海の浸食に怯え病に侵されジワジワと破滅を迎えなければならないのか、それを食い止めるために全てを燃やすのか。
そのどちらでもない、腐海と共存する術はないのか。
腐海の役割を正しく理解し、ナウシカが見つけようとしているその道は現実世界でも必要なものだと思う。
この映画が35年前のものであることに驚き。
傲慢な人間、大気の怒り、今に通ずるものや未来に通ずるものがあまりにも多い。
地球温暖化なんて言葉もはや聞かなくなった昨今、じわじわと破滅に向かっているのは映画の世界ではなく今まさに生きているこの世界。
ナウシカのように自然に敬意を払って生きていけるだろうか…。
自分の未来が怖い。死にたくない。
思い出補正もあれど、心から愛してる作品。
おそらくものすごく沢山の意味が込められていて、それを全部考察するのはなかなか難しい。
変に深読みする暇もないくらいこの映画の世界に入り込んでしまう。
好きなところが多すぎて挙げきれない。
初めての劇場鑑賞。
ノスタルジーも含め、好きなシーンでいちいち号泣していたので大変疲れた。大変満足。
ああー、メーヴェに乗りたいし蟲笛ブンブン回したいしアスベルとデートしたいし流砂に飲み込まれたいしユパ様と探検したいし大ババ様のスープ飲みたいしミトとお酒飲みたいし王蟲の触手に包まれてランランララランランランしたい。愛してる。
シタアス調布のリバイバル上映にて。
これほど好きな作品だというのに原作をほとんど読んでいないことに気付いたので即購入した。
追記
原作を読んだ。映画の感想ではないので少しだけ。
思っていたより戦争戦争で、土鬼や蟲使いなど民族が多数出てきて若干混乱。
ナウシカの神格化(本人はそう思っていないが周りの持ち上げ方が完全にそれ)が加速していた。
辛くて厳しい終末と再生、再出発の物語。チククがめちゃくちゃ可愛い。チククの針は痛いぞ。
映画への思い入れが強すぎて、漫画の展開にショックも大きい。正直しんどい。
私は私の好きなナウシカの物語を愛し、これからも心の支えにしていこうと思う。
土鬼側の遣り口をペジテに合わせたりユパの体験をナウシカに当てたり、映画にするにあたってのまとめ方が上手いな…。
生きねば。