「こんな時にこそ人間の本性が判る」U・ボート ディレクターズカット bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
こんな時にこそ人間の本性が判る
笑える。気楽に。そんな「おバカ映画の1日」にするつもりがですよ。いつの間にか気づいたら、Uボート。U-ボート????ガチもガチの戦争映画ですやん。1944→ロシアンスナイパーから立ち直ったのに。レッドスパロー→ゼログラビティ→Uボート ディレクターズカット ですよ。気づいたら。
こんな時にこそ人間の本性が判るんですね。クソミリオタやん、やっぱり俺。何でなんだろ。ここんとこ、やたら戦争映画ばっか見たくなる心理状態。ストレスですかね。もう早く劇場行きたいです。マジで。
と言う事で、この名画の感想文も今更なので。12月23日、クリスマスイブを前に、ジブラルタル海底から帰還し、フランスの母港へ向かう艦内での、艦長(ユルゲン・プロホノフ)の言葉の中に出て来た「ルカの福音書」の意味に関する解釈だけ。
U-96は海上で遭遇した艦隊を魚雷攻撃。駆逐艦の反撃を交わした後に浮上し戦果の確認を行います。そこには燃え続けるタンカー。止めを刺すために更に一発の魚雷を発射。ところが。船首には、まだ人影がありました。火に包まれながら海に飛び込む人々。Help Meの叫び声。
「駆逐艦は救助しなかったのか???」
U-96に向かって泳いで来る人の姿を、歪んだ表情で見つめる艦長は、後退を命じ、現場からゆっくりと立ち去って行きます。
クリスマスイブの前夜、艦長は「ルカの福音書でも読むか?」と口にします。ルカとはパウロの弟子である医師だとされていますが、その中には有名な「善きサマリア人のたとえ」が含まれています。
道中で強盗に襲われ半死半生となっている人がいます。そこを三人が通りかかる。最初の祭司も、次のレビ人も、遠回りをして通り過ぎます。三人目のサマリア人は、その人を助け傷口の治療をし、宿屋まで運んで介抱します。
このたとえ話の後、イエスは「誰が怪我人の隣人となったか?」と問い掛け、これを聞いた人は「助けた人です」と答える。「あなたも同じ様にしなさい」とイエスは言います。
戦場とは何だったのか。艦長の言葉を通じて問いかける映画の最後。艦長自身も「隣人では無い」戦闘機の攻撃で命を落とす。
戦闘シーンに派手さはない潜水艦もの。恐怖と緊張感は、艦内に居る者達の表情と音だけの演出。今日日の戦争映画は、それはそれで胸アツですけど。無残と虚無しかない戦場を描いた映画として、何時までも心に残る名画だった。