劇場公開日 2013年11月23日

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「エスケープ・フロム・実家」もらとりあむタマ子 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0エスケープ・フロム・実家

2014年2月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

幸せ

大卒後に実家に帰省したタマ子が、就職せずに
実家でグウタラ生活を送りまくる様子を描くという
スリルとサスペンス満載のアドベンチャー超大作(大嘘)。

* * *

前田敦子演じるタマ子のグウタラな
生活感、特に食事シーンが良い。

ロールキャベツはぐはぐ、漬け物ぽりぽり、
お団子ぽぐぽぐ、アイスバーちゃむちゃむ、

これだけ撮影期間中に食べたら絶対太ると思うんだけど(笑)、
美味しそうなものをだらんとした服装でモクモク食べ続ける姿が
なんだかキュート。なおかつ生活感バリバリ。
寝っ転がってテレビ見ながらプッチンプリン(ビッグ)を
食べたりするシーンの壮絶なリアリティたるや(爆)。

ニュース見て「ダメだなぁ日本は」と呟いたり、
居間のこたつで夕方まで眠りこけてたり、
知り合いの中学生にカノジョができたのを街で見かけて
にまぁ~と笑いながら何度も振り返ったり。
近所のオッサンか、アンタは。

大きな笑いは無いけれど、思わずニヤリというか、
自分が休日ダラダラ過ごしている様子をそのまま
見せられているような苦笑いが満載でぼんやり楽しい。

* * *

そんな娘にヤキモキしつつ、娘に強く言い切れない
親父さん(演じたのは康すおん)の姿がもどかしい。

娘の将来は心配だけど、彼女が何になりたいのか
分からないし、あんまりプレッシャーを掛けすぎると
取り合ってもらえなくなるし。
最後の選択も含めて、優しい親父さんだったと思う。

* * *

とはいえ、タマ子もただグウタラしてる訳じゃない。

いっちょまえになっていく近所の中学生、
帰省してきた友人、父親の縁談バナシ。
それらに尻込みして見えるタマ子。
(いや、中学生はアゴで使ってるけど)

そりゃ、のほほん平和で変化の無い日常が続けば一番。
けど、ゆるやかなペースで、しかし確実に日常は変わっていく。
いつかは巣立たなきゃ生活していけなくなる。

んなこと人に言われなくてもタマ子は分かってるんである。
家族に迷惑を掛けてることなんて百も承知だ。
そして、それを申し訳なく思ってもいる。

* * *

僕の親戚や友人にも同じような生活をしているのがいるが、
『周りは前に進んでるのに自分だけ“生き遅れ”てる。
 そのくせ、どう動けばいいかがイマイチ分からない』
というもどかしさや劣等感みたいなものが
彼らからも伝わってくる気がする。
(彼らの場合は仕事を辞めてからなので
 タマ子の場合より根が深い訳だが)

今って、仕事へのモチベーションは保ちづらいし
社会に出ていくのが怖い時代だと思う。
頑張って仕事してもあっさりクビ切られたり
経済ニュースは将来が不安になることしか言わなかったり。

自分からなかなか動き出せない人だっていますよ、そりゃ。
自分を卑下する必要は無いし、焦らなくて良いから、
ちょっとずつちょっとずつ前に進めばいいんじゃない?
周りもあまりプレッシャーを掛けずにそう仕向けなくちゃ。

なんてことを、映画を観ながら感じた次第。

* * *

以上!
心をどかんと動かす映画ではないけれど、
のほほんとした空気を笑いつつ、
ちょっとだけ前向きになれる映画。

ところであの中学生くんのセリフ。
「オレ、恋に部活に忙しいんだよね」というヤツ。
こっちまで頭ひっぱたきたくなった(笑)。

〈2014.02.16鑑賞〉

浮遊きびなご
GokiPinoyさんのコメント
2014年3月3日

返信ありがとうございます。

>エスケープ・フロム・実家

実はこのタイトルがE・フロムの「自由からの逃走」
「Escape from Freedom」をもじったものだと思ってました。

あ、でも本当は「能ある鷹は爪を隠す」なんでしょう?(笑)

GokiPinoy
GokiPinoyさんのコメント
2014年2月27日

Gokiです。お久しぶりです。

なんとも懐かしい響きの「もらとりあむ」に釣られて出て来ました。
もうとっくに死語になってるものと思ってましたが。

なぜかネガティブなことを先駆けてしまう私は、
大学時代に「ウツ」になり(当時の診断名は「心因反応」)
なんだコレはと自問して見つけたのが、
小此木啓吾の「モラトリアム人間の時代」でした。

親の言うことを聞いて「森田療法」も試しましたが、
ナントカ神経症ではなかったので一ヶ月も続かず、
結局、慶応付属病院まで小此木啓吾に会いに行きましたもんね。

でも半年待ちだと言われ、彼の一番弟子にお世話になることに。
その方も今では日本臨床心理士会の理事におなりでして。
同時にその頃は難解な映画を見まくってました。
もちろん本も、エーリッヒ・フロムも読みましたよ。

今から思うと丁度その頃が自分にとっての「もらとりあむ」だったのかなと。

今の日本には形骸化した「成人式」があるだけで、
「元服」のような実のあるイニシエーションはありませんね。

そう言えば、余談ですが「47浪人」で主税が切腹を免れるのは、
マイナーを殺しちゃうと18禁になっちゃうからでしょうかねぇ。
それでなくてもアレでPG-13ってのも凄いと思いますが。

永田町見ても、どこに「大人」がいるんだろうと思ってしまうので、
日本人にとって「モラトリアム」の意義は何なんでしょうね。

あ、映画を見てもいないのに失礼しました。

GokiPinoy