「断片的なエピソード・・」大統領の執事の涙 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
断片的なエピソード・・
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物語はワシントン・ポスト紙に載った実際のホワイトハウスに34年務めた執事ユージン・アレンの記事に触発された脚本家ダニー・ストロングによって書かれたが話を劇的にするため、綿花畑での惨事や息子の戦死ほかフィクションが多く含まれる。奴隷もどきからオバマ大統領誕生までの主人公や黒人たちの苦難の歴史は感慨深いが執事の物語として観るとエピソードも少なく「日の名残り」の老執事と主人の関係ほどの深みが描かれていないのが残念に思えた。
考えてみれば職を辞したとはいえ執事の守秘義務、忠誠心は堅いのだから「家政婦は見た」のようなスキャンダラスな話が表に出てくるわけもなく家庭問題で尺を埋めざるを得なかったのだろう、タイトルに騙された気もする。
本題の人種差別について考えてみた。アメリカの人種差別の根はいわば白人至上主義だからインディアン狩りに始まり黒人奴隷、ヒスパニック系、アジア系移民まで広く及ぶのである。差別撤廃は人道主義的見地からと信じたいが政治家特有の計算も見え隠れする。産業構造の変化や人種構成も変わってきており能力評価主義に動いているがプア・ホワイト層の不満を扇動したトランプ政権の台頭により雲行きも怪しく見える。人種差別を扱った映画は多いがいまや新たな格差社会が台頭してきておりAIに仕事を奪われるといった話が実しやかに語られる時代になってしまった。映画で定番の近未来は悲観的なディストピアが多いがそこではどんな人間の黒歴史が上映されているのだろうか・・。
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