劇場公開日 2013年11月2日

「ヨーロッパ人が潜在的に抱く殺戮に対する恐怖」武器人間 garuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ヨーロッパ人が潜在的に抱く殺戮に対する恐怖

2022年1月11日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 殺戮の歴史がDNAに刻まれたヨーロッパ人の芸術表現には、映画に限らず、非常に暗い雰囲気を纏ったものがある。 この作品もまた、絶望感を感じさせる暗さを湛えた一本だ。

 現代の若者は、この映画をバイオハザードのような殺戮ゲームの映画版として楽しんでいるようだ。 監督も、あえて笑えるぐらいに極端な悪夢を演出したのだろう。 先の大戦で実際に繰り広げられた真の悪夢を、荒唐無稽な物語の舞台を借りて表現しようとしたわけではないのかもしれない。 ただ、終始この映画を貫いている暗いトーンにはやはり、 国境間で弱肉強食の殺戮戦を繰り返してきたヨーロッパ人が潜在的に抱く、 戦争に対する恐怖心のようなものを感じてしまう。

 日本人も先の大戦で血と肉の飛び散る悪夢のような殺戮戦を経験してはいるが、島国として歴史を重ねてきた民族の気質なのか、死を忌み嫌い、過去を水に流そうとする神道的な思想からなのか、 こういう閉鎖的な暗さを持った外国映画に対する反応は、年齢に関わらず非常に客観的であり楽観的だ。 1960年代に作られた、「吸血鬼ゴケミドロ」や「マタンゴ」などの悪夢系の邦画には、まだ少し、戦争の閉塞感を実際に経験した人たちが作った独特の暗さがあったが、 今はもう見当たらない。

 おそらく、 現在の若いヨーロッパ人の反応も、殺戮系ゲームの映画化版といったように、半ば笑いながら観ている者が多いのかもしれない。 まぁ、映画は臭いを感じないのだから、そのまま映像で楽しめばいいのだが・・・。

個人的には、子供の頃に観なくてよかったと思っている。 R15指定。

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Garu