劇場公開日 2013年11月9日

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THE ICEMAN 氷の処刑人 : 映画評論・批評

2013年11月5日更新

2013年11月9日より新宿武蔵野館ほかにてロードショー

大男の殺し屋と70年代の風景。奇妙な馴染み方が胸騒ぎを呼ぶ

生来の殺人鬼がマフィアの殺し屋に変身する。そう聞けば、通常は不穏な予感を覚える。血のオペラや、複雑なトラジコメディを予想してもおかしくはない。無慈悲や冷血や非情は、さまざまなドラマの種になる。

では、その殺し屋が異様なほど家族思いだったらどうなるか。当然のことながら、彼は二重生活を送る。妻と娘を溺愛しつつ、冷酷な殺人を黙々と重ねる。

ご承知と思うが、「The Iceman 氷の処刑人」は実話をベースにしている。主人公のリチャード・ククリンスキーは、1935年に生まれ、2006年に死んだ。身長195センチ、体重135キロの大男で、1986年に逮捕されるまでに多くの殺人を繰り返した。犠牲者の数は、100人とも250人ともいわれる。

そんなククリンスキーの役を、マイケル・シャノンが演じる。大男というのも重要な条件だが、シャノンには、見る者の記憶にからみつくような特徴がある。眼の色素は淡く、沈着と逆上が紙一重で、腹の底が読めない。

監督のアリエル・ブロメンは、そんな男を1970年代のニューヨーク界隈に放つ。そう、タイムズ・スクエアにポルノショップが林立し、ニュージャージーにもマフィアがうごめいていたあの時代。

ブロメンは、その時代を劇的に描かない。話の間口を狭め、画面の彩度を落とし、テレビ・ドキュメンタリーを思わせる淡白な語り口で描いていく。ただ、テレビとちがって、「世界の汚れ」が深い。ククリンスキーの「ビジネス」と茶褐色の背景も、奇妙に馴染む。彼の個性が立つのではなく、その非情がむしろ時代に吸収されることで、見る者の胸がざわざわと騒ぐのだ。脇を固めるクリス・エバンスロバート・ダビの存在も、胸騒ぎを増幅させてくれる。

芝山幹郎

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