「もう一人の自分と選んでいたかもしれないもう一つの人生」シャンボンの背中 arakazuさんの映画レビュー(感想・評価)
もう一人の自分と選んでいたかもしれないもう一つの人生
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大工として地道に働き、年老いた父親を気に掛け、妻と幼い息子と穏やかに暮らすジャン。他人が見れば、良き父、良き息子、良き夫として生きる彼に何処か満ち足りない思いがあるとは想像出来ない。彼に心の隙があるとしたら、それは「こんなはずじゃなかった」という後悔ではなく、彼が選ぶことのなかったもう一つの人生に対する漠然とした憧れのようなものだったように思う。
そんな彼の前にもう一つの選択として現れたのが、息子の担任である代理教師のシャンボン。
「どうもはじめまして」という当たり前の出会いならば、二人の間に何か起きることはなかったのかもしれない。しかし、彼女は無防備な姿を見せることで、ジャンの心を捉える。代理教師として各地を転々とし、どうやら家族とも距離を置いているらしい彼女もまたジャンに心を寄せる。
正に運命の悪戯。
しかし、観客にはジャンが家族を捨てることはないだろうと分かる。
彼にはそんなことは出来ない。
しかし、一方で彼女がジャンの今後の人生において「選んでいたかもしれないもうひとつの人生」として残り続けるだろうということも分かるのだ。
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