「要らない解毒剤」銀の匙 Silver Spoon しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)
要らない解毒剤
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これまで「毒」を振りまいてきた吉田監督。堀北真希さんという究極のピュアネスを使っても、猛毒を振りまいた「麦子さんと」。今度は中高生中心、いや、ピンポイントにした題材の映画だ。
なるほど、ちょうど「WOOD JOB!」と正反対の映画だ。
決定的に違うのは、いわゆるリアリティの演出で、本作はドキュメンタリーチックな語り口のなかを人気俳優が自身のキャラクターそのまんまを演じて、結果リアリティからほど遠い世界を見せているのに対し、「WOOD・」は役者はキャラを主張し、世界観は決して壊さない。
これは、間違いなく「客層」を考慮した上での興行的戦略の差だろう。
結果、これまでの吉田監督の毒にうなされつつも、毒を求めてきた俺としては、見るも無残な青少年映画となってしまったことに、一応の納得はした。オレの言う無残とは無毒、といってもいい。
だからまず、俺がガタガタ言う映画ではない、ということだ。
しかし、なにより、ずいぶんとハズした役者をあえて揃えてきたなあ、と。ここまでくるとわざと、としか思えない。「麦子さんと」の堀北真希さんはだからこそ、の配役だったが、本作の役者陣にその意味はない。
また、ドキュメンタリータッチについて、「ばしゃ馬さん・」の老人ホームのシーンでものすごい違和感を感じた、やっすいドキュメンタリー感な絵がここでは全編に渡って繰り広げられる。
今回、とる題材が合わなかった、とか、メジャーに合わないとかは、関係なく、明確なターゲット層の作品で、求められる結果を出せなかったように見える。
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