「エコノミーセレブ。」ブルージャスミン ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
エコノミーセレブ。
K・ブランシェットがめでたくアカデミー主演女優賞を獲得した作品。
「欲望という名の電車」や「サンセット大通り」、酒に溺れるといえば
「ヴァージニアウルフなんか~」に通じるコワイ演技をしているのか
と思っていたんだけど、観てみたらいつも通りの達者な演技だった。
鬼気迫るというよりは、よくいる哀れな中年女、といった感じで、
まだ親近感を抱きやすい。ゴシップ記事などにも似たのがいそう。
彼女の精神面は、傍にいる人間がしっかり説明してくれている。
「機内で逢った人よ。自分の話をずっとしてるの。聞いていないのに」
「悪いのはハルよ。姉は可哀想なの。金銭感覚が弱い人だから」
このジャスミン、確かに精神的におかしいんだけど、
彼女が辿ってきた過去を見せられると、ありゃ~これじゃあな、と思う。
セレブ生活から一転、一文無しになって、夫は逮捕→自殺、そして…
後半で明かされるもう一つの事実が彼女を奈落の底へ突き落とす。
あれだけの生活をしていれば人間、誰だって簡単に元へは戻れない。
「どうしてファーストクラスなの?お金がないならエコノミーでしょ?」
ダメなんですよ…このおねいさんは。何も捨てられないし諦められない。
プライドを捨てるくらいなら死んだ方がマシ。っていうタイプだもん。
どうして姉妹でこんなに性格が違うの?と思ったら、お互いに孤児で、
同じ里親に育てられたというだけ。仲よさそうに見えたんですけどねぇ。
オトコを見る目がない(爆)ってのはある意味、共通しているのだけど、
どちらにしてもオトコがどうのというより、幸せの中身を把握できてない
ところが共通している。姉は臭い事実に蓋をして取り繕ってただけだし、
セレブな姉に負けじと違う世界に手を伸ばしては簡単に失敗する妹。
情けない男ナンバーワンに匹敵しそうな元夫のオーギーや今彼のアルが
姉に対して向ける視線はほぼ同じで、アンタ何様のつもりだ!が必至。
肉欲感が強く脂ギッシュなところは、ご本家の若きM・ブランドに匹敵
しそうなんだけど、人格破綻していたブランチと今回のジャスミンでは
言葉以外に絡みようがない感じ^^;なので、怖いイメージはどこにもない。
一番恐ろしかったのは後半、富豪P・サースガードと喧嘩別れする原因と
なった、オーギーのあの一言。そもそも逮捕の原因を作ったのが誰で、
転落人生を歩むことになった自業自得と、親族からの冷酷なメッセージ。
どんなにバカでも、どんなに貧乏でも、きちんと家族を愛する人間ならば、
ああいう過ちは犯さない。そもそも結婚して家族を作るのは虚飾じゃない。
責任を果たさない人間に課せられた罪が彼女の哀れを一層際立たせる。
(しかし人生まだまだ。まずは酒も見栄も男も断ち切って自立しましょう)