「コメディではあるけど近年の彼の作品ではぐっとシリアスな作品になっている。ウディの私映画としての側面も」ブルージャスミン ハルさんの映画レビュー(感想・評価)
コメディではあるけど近年の彼の作品ではぐっとシリアスな作品になっている。ウディの私映画としての側面も
これってウディとしてはどこまでが狙いだったのか。ケイト・ブランシェットの演技は笑えるところで笑わせないリアリティがあり、その迫力が本のおかしみを食っているような印象。良いか悪いかではなく、この作品は基本的にケイトの作品となってしまった。それが出来るってのが凄いんだけどね。アンドリュー・ダイス・クレイやサリー・ホーキンス も良かったけど、彼女のあの演技を受けることで引き出されたものがあったのではないか。こういう作品を時々やっちゃうからダイアン・キートンからも擁護されるんでしょう。
さて、ジャスミンとジンジャーは2人とも里子として同じ里親に育てられた義理の姉妹という設定。血は繋がっていない2人だからこそのアングルがストーリーに深みをもたらしているのだけど、これってウディ自身のプライベートを考えるとザラツく設定だと思うし、またジャスミンの前夫ハルとの間にもやはり血の繋がらない息子がいるというのもそう。ジャスミンは血縁者のいない孤独な存在なのだ。それも彼女の人物造形の一つの要素だろう。そしてその息子に「あなたが必要なの」と訴えた返答が「二度と現れないでくれ」という拒絶だったのもウディの作品と考えるとザラツくわけ。誹謗中傷されているというわけではないけれど。
そしてとうとう明かされた、ジャスミンが全てを失った理由。それは夫の浮気がきっかけとなったのだが、その浮気相手は19歳ということでしかも「浮気ではなく本気」だと告げられて我を失い夫の悪事を通報‥‥というくだり。これもザラツきますね。
コメディだけどシニカルでせつないし怖くもある。ここにブラックさが加わるとコーエン作品になるんだろうが、やはりウディは重い方にはなかなか行こうとはしない。コーエンが重いかっていうとそうではないけれど。しかし年齢のこととか考えると凄い作家だなとあらためて思わせる今作でしたね。
ケイトの脇汗とか衝撃映像だよな‥