劇場公開日 2014年3月21日

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「重い。(重厚という意味で)」フルートベール駅で mmさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0重い。(重厚という意味で)

2018年3月23日
PCから投稿

悲しい

知的

難しい

この監督のことはBlack Pantherでも褒めちぎったが、そんな彼のデビュー作。
新進気鋭の若手監督と言えばNeill Blomkampが浮かぶが、
Neillが奇をてらった新鮮な作品を作る若手だとすれば、
本作の監督であるRyan Cooglerは、真面目にとことんスタンダードなことをやる、といった印象か。

実際に起こった事件を基にしているため、ストーリーは決まっているからこそ難しい。
必要以上にお涙頂戴風にすることもなく、しかし淡々ともし過ぎず、
なんとバランスのとれたことか。

学校で観せても良さそうなくらい真面目な創りなのに、かと言って退屈もしない。
実際の事件であり、日本人には予想も付かないほど複雑な人種問題が絡んでいるだけに
真面目すぎて退屈になるか、オスカーを善人に描きすぎて押し付けがましいかのどちらかに偏ってもおかしくない。

しかしどちらに偏ることもなく、ひたすら考えさせられる。良い意味で、重い。
この若さにして、3作目にしていきなり、MCUシリーズの一本を任せられるだけのことはある。

黒人(当事者)である監督が、こうも冷静に人種問題を描いた点も評価されるべきだし、
なんてことだろうか、良い点しか見付からない。

作品の舞台になったオークランド周辺には何度か行ったことがあるが、
確かにいかにも治安が良くない。昼間でも、そういう空気がある。
さすがにアメリカの刑務所を訪れたことはないが、全編を通して、舞台となった街の空気感まで伝わってくるようだった。

デビュー作からこれはすごい。かなりの良作。

Hanzawa