「観る者を選ぶが学べるコメディ良作」神様はバリにいる えのきちさんの映画レビュー(感想・評価)
観る者を選ぶが学べるコメディ良作
『神様はバリにいる』を鑑賞。
日本でビジネスに失敗し借金を抱えた祥子(尾野真千子)は自殺しようとバリ旅行に。
そこで出会った厳つい風貌の大富豪アニキ(堤真一)にビジネスで成功する為の秘訣を知るために弟子入りする。
アニキは現地では住民からの信頼も厚く、祥子はその考え方と行動力に感化されていく。
まず劇場ポスターのビジュアルを見たときどう感じるか。
これがこの映画を観るか否かの境目である。
面白そうだと思う人は間違いなく楽しめる。
逆に面白そうに見えない人にはいくら説明してもこの映画の楽しさは理解できないだろう。
一見品格のかけらも感じられない主人公の大富豪アニキ(堤真一)が祥子(尾野真千子)に語るアドバイス「人生はドラゴンクエストであり経験値の集積である」「苦しい時こそ笑え」などは極論ではあるものの、至極まっとうなものなので、ビジュアルさえ見慣れてしまえば、実は学ぶ点が多い社会人向け自己啓発ムービーとなっている。
そういう意味では単純なコメディだと思って鑑賞すると少し得した気分を味わえるかも知れない。
ただ社会人向けと言っても、ベテラン社会人には少し甘っちょろいものなので役には立たない。
これから社会に出る学生や社会に出たての若手の方々であれば社会への貢献とはどういうものかを学習しながら楽しむ事ができる。
強烈な役作りでぐいぐい引っ張っていく堤真一に負けずに喰らいついていく尾野真千子のコメディアンヌぶりは素晴らしく、是非別の作品での再タッグも観てみたい。
また、今作ではミュージシャンのナオト・インティライミが出演しているが、これがなかなかの拾い物。
演技は素人くさいが実に味のあるキャラクターを演じており良いアクセントとなっていた。
今後の活躍にも期待したい。
ちなみに今作は実話をベースにしているのだが、そんな情報は全く必要ない。
観た者が必要だと思う情報や知識を取捨選択して身に付けるも良し、何も考えず能天気に楽しむも良し。
ある意味魔除けのようなポスターのおかげで、観客の満足度は概ね高いのではないかと思われる。
「ポスターを見る限り全く面白そうに見えないけど、評判が良さそうだから観てみようかな?」などとは思っている方は、冒頭に伝えたとおり自分の直観を大切にしていただきたい。