「臆病者ほど残酷」悪の法則 小二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
臆病者ほど残酷
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リアルなサスペンスというよりも、寓話的な話。
別に弁護士とメキシコマフィアの騒動を描きたかった訳ではない。
あらゆる時代、あらゆる国に当てはまる普遍的なテーマを描いている。
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主人公の弁護士に、周りの人間は麻薬マフィアの残虐さを長々と話す。
彼らは、弁護士に危険を「忠告」したのではなく、
麻薬ビジネスに加担しているオマエもその残虐さの一員なんだと罪の「告発」をしていた訳だが、
そのことに弁護士は気づかない。
いや、気づかない振りをしている。
周りもやっているからと流されている。自分は残虐ではないと勘違いしている。
そうやって罪から目を背けている。
目を背けた結果、惨劇が起きる。
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流される事、目を背ける事、その先の悲劇を想像しない事、自分の責任だと分かっていない事
それは、歴史的に繰り返し起きている。(唐突すぎる例かもしれないが、現在公開中の映画「ハンナアーレント」のナチス親衛隊アイヒマンだって同様なのかもしれない。彼が特別な極悪人だった訳でなく流されてしまう凡庸さが苛烈な歴史を生んだのかもしれない。)
そういった大きな時事や犯罪だけではなく、もっと些細な事であっても
日常的に、気づかずに、もしくは気づかない振りをして、他人を踏みつけにしている事はないだろうか。
罪の意識もなく流されている事はないだろうか。
全く無いと言い切れる立派な人は、この映画を必要としていない。
(もしかしたら気づいていないという点において、最も必要としている人なのかもしれない。)
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自分の残虐さから目を背ける者こそが一番残酷。
ラストのセリフ「臆病者ほど残酷」が耳に残る。
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