「誰もが、星になるまえには必ず観ておくべき作品だ」僕が星になるまえに Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
誰もが、星になるまえには必ず観ておくべき作品だ
難病患者を主人公にした映画はこれまでにも、星の数程多数制作されて来ている。
しかし、本作の様に、ベネディクト・カンバーバッチ演じる末期ガンの主人公の青年ジェームスと、彼の親友3人組が連れ立って彼の最期の旅に付き合うと言う、こんな形のロードムービーと言うのは珍しいと思う。
しかも、流石は英国映画である。セリフがかなり辛辣だ、ブラックジョークも含んでいる。
ついついこの様な作品を、日本で制作するのなら、甘く優しく、病気の患者を傷付けない様に、腫れものに触る様な対応をする、そんな廻りの人間の苦悩も描かれるような気がする。
しかし、この作品では、ジェームスと友人達4人の旅では、各々が抱える人生の問題を次第に明らかにして行き、ジェ-ムスの病気の人生だけが、悲劇では無いと言う態度を終始見せている点が素晴らしい、脚本の巧さだと思う。
「自分に配られたカードを生きて行くしかないのが、人生だ」とジェームスが語る。
そして、ジェームスのこれまでの生き方についても、友人達は冷静な客観性を持った目で彼を見つめて行く。
ジェームスには死が身近に迫っているからと言うだけの、同情と憐れみだけの態度で、友人達は決して接しない。
病人を特別扱いしない厳しさがある。しかし、同時に友人達も、どうジェームスに対処するのか、悩み葛藤が無い訳では無く、そんな彼らの苦悩も細かく描かれている。
映画とは関係が無くて、申しわけないが私も、学生時代の第一番の親友が32歳でガンになり、発病後半年で亡くなった経験を目の当たりにした。
その友人は、日本なので初めは告知を受けていなかったのだが、一向に回復しない病状から、遂に彼は真実を突き止める。
その彼が、「本当は、お前は俺の病気がガンだって知っていたのか?」と問い正され、どう彼に対処して行くべきか、悩んだ経験がるもので、この映画に描かれている、友人のJ・Jフィールドが演じているマイルズの気持ちが手に取る様に理解出来るのだった。
今では完治も可能なガンも多々有るけれども、実際には依然としてガンを患い死に至るケースが未だ未だ多いので、これは決して他人事でもない、身近な問題である。
そしてこの作品は、生きる事の意味及び人として、患者自身が残された時間をどの様に大切に生きて行く選択をするのかと言う問題を含めて、多くの問題提起を付き付ける。
美し過ぎる景色が広がる自然の中を旅する彼らと、全く対照的な心の中の暗い苦しみが、見事な感動となって胸にせまる。ラストシーンに至っては、本当に胸が潰れる想いだ。
本作は、今年観たベスト3に入れたい秀作だと思う。
余りにも哀しいラストだが、生きる事、死ぬ事、そして運命と人生に付いて深く考えさせられる見事な作品であった。