「原作○、映画◎」白ゆき姫殺人事件 Chisaさんの映画レビュー(感想・評価)
原作○、映画◎
原作を読んだ印象としては、「告白」「夜行観覧車」ほどのエグさはないけれど、「Nのために」ほどポップでもない。
(ちなみに「少女」はつまんなくて途中でやめた、「贖罪」は読んでいない、「花の鎖」はなんか異次元)
この作品にしても、2015年4月スタートのドラマ「マザー・ゲーム」にしても、「現実世界でさすがにそこまではないっしょ」と苦笑してしまうほどの誇張をもって描かれていながら、しかし一歩下がって俯瞰してみればほとんど同じようなことが現実に起こっているということに気付いて、ゾクッとする。
つまり、生瀬扮するニュースキャスター(あれは明らかにミヤネを意識している笑)ほど、あからさまに決めつけて発言しまう人はいなくても、そういう雰囲気を、誰一人として意識せずとも番組全体でいつの間にか醸し出してしまっている、という状況はよくあるのではないか。
また、菜々緒扮する三木典子ほどあからさまに手のひらを返す嫌な女はいなくても、あんな雰囲気の女はいるのではないか、いや、これは「いる」と断言できる。私見たもん☆
そして綾野剛扮する赤星の処分が原作より甘くて物足りない気がした。
確かもっとコテンパンに、立ち直れないくらい業界から完全追放されて絶望していたような。
さらに大変偉そうな言い方で恐縮ですが、「すべてがFになる」で犀川先生を演じるために必死に頭良さそうなフリをするも結果的に大失敗だったあのときよりは、格段にいい演技だったと思います。
井上真央の演技は「八日目の蝉」に引き続き大絶賛。好き♡
貫地谷しほりも良かった。
ラストは月並みに涙。
好きな小説家は誰かと聞かれたときに答える数人の中に、必ず湊かなえと角田光代を入れるのだけれど、最近は映画やドラマが原作を凌駕したと感じることが多い。
今作然り、「Nのために」「夜行観覧車」「告白」「八日目の蝉」など然り。
活字から情景を頭の中に想像しつつ、散りばめられた布石を見落とさないように気を配りつつ、登場人物に感情移入しつつ、読む、という能力が不足している所以か。
そう考えると、小説で泣ける人は凄いなぁ。
とは言え、最後に一つの拾い忘れもなく布石が回収され、全てが腑に落ちて「言われてみればまぁそうだよね」と納得させられてしまうこの完成度の高さは、芸術的。