「トリック劇場版 ラストステージ」トリック劇場版 ラストステージ 山茶花Qさんの映画レビュー(感想・評価)
トリック劇場版 ラストステージ
身も蓋もなく言えば、馬鹿くささに笑ってしまう。面白いと言えばそれが面白かったかな。
これにあとまだ2時間近くもつきあうのかと思うとのっけからウンザリだったが、頼みの綱は、それもこれも計算あっての布石に違いない、そうでないはずはない、という一縷の望み。名作鎌田行進曲がちょっとそうだった。ただの馬鹿くささとは違うが何だコリャと思う出だしの後に、これでもかこれでもかの感動攻勢で息つく暇なかった。しかも原作者一流のあのやぼったくかつ繊細なバナナマン的滑稽味。
この作品にもそういう面は多少あった……質と出来の違いを問わなければ、なくはなかった。
ギャグの連続の中には笑いを漏らしたくなるものも全編通して3つか、多めに見て4つはあった。と言っても最近の優れたお笑い芸人を思えば素人レベルだ。料金を払って入ったうえは、の景気づけのためのご祝儀笑いを含めての3つ4つにすぎない。
一方でライフル男の横柄で乱暴な物言いには、キャラの彩りを賑やかにしようの意図は認めつつも、まるで舌が罵りしか知らないかというロクでなさに不快感がつのる。
キャラの彩りを心がけるなら、多少は深みもあるところで勝負するのが才能またはたしなみであってほしい。
映画作者なら、テレビのドタバタとはわけが違うぞの矜持あってしかるべきかと勝手に思ってみたりするが、上っ面だけしか正体とてないゴロつきやオカマをとりまぜてお茶をにごしている安直さは、テレビのドタバタにさえ劣ってチト情けない。
テレビなら少なくとも観客の不快を代償にするようなことはあまりしまい。
それやこれやで、機械油を舐めたような気分がだんだんしてくるころ話は展開する。
なるほど、狙いはこれだったかとわかる。基調の剽軽味と展開の深刻さとのギャップに慄然とするところは確かにある。しかし別段斬新な手法でもない。実際事態はありふれている。映画を大して観るほうでもない私にさえ月並みの思いしかない。
そしてやがて明かされる真相にはひと工夫があり、ここに至ってやっとこさ入場料の何分の1かが取り返せたかの気分になるのもつかの間、よく考えてみると、この仕掛けは暗黙の禁じ手じゃなかったかという気がしてくる。
作者は観客を見くびっているのか、それとも自分の才能をその程度と見限っているのか。とにかく、勝負どこがちょっと違わないか、という思いしきり。
主人公仲間由紀恵さんの日本語が未熟でちょっとかわいいのはシリーズ通じての設定が何かあってのことだろうが、その言葉遣いが、結末に近づくころにはすっかり当たり前のものに変わっているのもご愛嬌というにはちょっとお粗末。こういうところの目配りも文学作品やなんかとははなっから違い、しょせんこんなもんでっせ、の感。
というわけで、出口通路のカーペットを踏みながら、冒頭述べた感想にもう一度笑ってしまうのだが、その出がけに芳香剤だか消臭剤だかをシュッとひと吹きのつもりかの付け足しが、また何とも無邪気というか幼稚で、もうひとゆすり笑わざるをえなかった。