「股間にチーン♪は無いわ」るろうに剣心 伝説の最期編 くんぞうさんの映画レビュー(感想・評価)
股間にチーン♪は無いわ
前二作と見てきて、身体や目が慣れてしまったのか、そんなに悪くないというか。
それなりに楽しかった。
補足(アクション、役者は三部作と全てかなり高水準であるため、楽しめたというのはお話の部分)
相変わらず脚本では登場人物の言動行動にちゃんとした繋がりが薄く納得出来ず非常に感情移入しにくい所は多々あった。
そして無駄に長く湿ったらしく続く説教シーン。ほんとうにいらない。
剣心の師匠が出て来てからは、激しくただの受け売り感がした。
こういうのも本当に相変わらずである。
その点、脳内ナレーションの数は減った。
序盤は、福山雅治演じる剣心の師匠の元で、修行をする展開。奥義とか急に出て来てあまり親切でないスタート。
だがここで思ったのが、
剣心の師匠。比古清十郎を福山雅治に演じさせているということを考えると、
大友監督が「龍馬伝」のその先、あったかもしれないもう一つの「龍馬伝」を作ろうとしている意志を感じた。
志々雄真実という幕末の犠牲者というキャラクターを今作最大の敵にしているのもおそらくそういうことだろう。
京都大火編での完全に蛇足でしかなかった四乃森蒼紫のエピソードも、時代に取り残された人物という位置付けで、まぁそれなりに?納得出来た。
だがこのエピソードに時間を裂き過ぎだとも思った。中盤でのこの辺りの話運びや構成が下手くそで、全然東京やら日本やらが危なくなっているように見えない。全く危機感や切迫感が無く、志々雄真実の政府転覆の話が切り離されてしまっている印象。
ラストバトルに持っていくにはとても乱雑過ぎると思った。
クライマックスでの戦い。
アクションはRPG式で進んで敵が現れて、倒して進んでまた新たな敵と、というあえて一作目をなぞるような展開。これ自体は楽しくていいのだが、あまりアクションのアイディアが前二作と比べると少し単調になっている印象。同じようなことをしてるように見える。
雑な話運びだが、不覚にも燃えてしまう、アガってしまう展開が用意されている。
だが結果として志々雄真実は何も成せず散って行くのは少し物悲しい気持ちになる。
思うのだが、船が東京を攻撃するシーンが殆どないせいで、少しハッタリ感というか、肩透かし感がある。これは残念。
キャラが立っているだけにもう少し魅力増量シーンを増やして欲しかった。
そして最後。個人的には最大の問題シーン。
明治政府が戦いを終えた頃に登場し、
「侍たちに、敬礼!」と言って敬礼をするシーンがあるのだが、ここの解釈で作品の価値が大きく変わると思った。
自分は、幕末という時代で犠牲になり、新時代を作り上げた人たちに対する最大の皮肉だと捉えた。こう考えると心なしか納得出来た。
脚本がおざなりなのはご愛嬌。と思える人にとっては特に問題なく面白がれるのではないかと思う。
ただひとつ思うことは、
脚本やら演出やらをもう少し考えて無駄な所を削っていき、もっとタイトに出来たんじゃないだろうかと思った。
それこそ、前後編に分ける必要を感じない内容だった。
決して嫌いにはなれない素晴らしい要素もある。時間が経ってみると、いや結構好きかもと思えるような所もある。だが、脚本の構成があまりに大きく失敗していて、とても残念。というか悔しい!このせいで、やはり三作通しても「良くも悪くも」な作品になってしまっているのではないかと、思った。