「ラストの展開にやられた。政治の動乱に巻き込まれた「人斬り」の苦悩」るろうに剣心 伝説の最期編 といぼさんの映画レビュー(感想・評価)
ラストの展開にやられた。政治の動乱に巻き込まれた「人斬り」の苦悩
途中まで結構退屈に感じていたけどラストの展開だけで全てがひっくり返って評価が上がる作品ってありますよね。個人的には山崎貴監督の『アルキメデスの大戦』とかがそれにあたるんですが、本作もそうでした。
戦闘シーンのアクションはこれまでのシリーズと同様に素晴らしかったんですが、逆に言えば「これまでのシリーズと同じじゃん」と感じてしまいました。もちろんストーリーもアクションも、クオリティが高いのは間違いないのでそこそこに楽しめたんですが、「そこそこ」なんですよね。しかし最後の展開にはしてやられました。政治的な思惑に振り回された武士たちと、彼らを道具のように扱い、利用して成り上がった政府高官たち。明治政府の剣心に対する対応は二転三転、手首が捩じ切れるレベルの掌返し。左之助じゃなくても「どの口が言ってんだコラ」と殴り掛かりたくなる展開です。この展開があまりに熱すぎて、個人的にはバイブスぶち上りです。最高!
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『るろうに剣心 京都大火編』の後編にあたるシリーズ3作目。国家転覆を目論む志々雄真実(藤原竜也)を止めるために立ち上がった緋村剣心(佐藤健)。志々雄に負けて海に投げ出され浜辺に打ち上げられた剣心は剣術の師匠である比古清十郎(福山雅治)に奇跡的に助けられる。志々雄を倒すために清十郎による厳しい修業を経て、東京で再び志々雄と相見えることになる。
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個人的には前半がかなり退屈に感じてしまいました。前半は修業シーンがメインですので、敵との戦闘は全くないんです。修業で剣心と清十郎が戦うシーンはありますが、正直剣心が一方的にボコられるだけなので観ていて楽しいかと聞かれれば微妙です。修業シーン以外で言えば、剣心と明治政府高官(伊藤博文ら)とのやりとりなどの動きが少ないシーンが多く、このシーンも特別面白みはありません。本格的な戦闘が始まるのは映画の終盤近くになってからですね。志々雄の船に乗り込んだ剣心達が敵をバッタバッタと薙ぎ倒すところはやはり爽快感があってよかったです。
本当に終盤ラスト10分くらいまでは「前作までにあったような展開だな」と思いながら観ていました。しかしラストで志々雄を倒した剣心達に対して明治政府高官たちが取った行動に「うわぁ…」と思わず声が出てしまいました。上層部の思惑に成すすべなく流されてしまう剣心達と、周りの人間を自分が成り上がるための駒としか見ていない上層部。あまりにも歪な社会構造をまざまざと見せつけられるシーンでした。上層部の思惑に踊らされて悲劇的な展開になるのは『アウトレイジ』っぽいですね。
本当に面白い映画でした。2021年7月現在公開中の『the Final』『the Beginning』も近いうちに観に行こうと思います。オススメです!!
【余談ですが】
本作のように、「ラストが良すぎて評価がひっくり返された映画」で真っ先に思い出した映画は、山崎貴監督・菅田将暉主演の『アルキメデスの大戦』。山崎監督は『スタンドバイミードラえもん』『ドラゴンクエストユアストーリー』などの映画が評判悪くてあまり映画ファンの間ではいい話は聞きませんが、本作は紛うことなき傑作映画です。こちらの作品も前半は結構退屈なんですが、ラスト20分の展開が本当に見事で「うわぁ!やられた!そうきたか!」ってなった映画ですね。どんでん返しとは少し違う、言うなれば「価値観がひっくり返される」ラストです。『伝説の最期編』のラストに痺れた方は、『アルキメデスの大戦』もオススメですよ。