「弱点があるからこそ魅力がある剣心」るろうに剣心 京都大火編 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
弱点があるからこそ魅力がある剣心
物語の時代背景や世界観、主役クラスの人物設定は前作で済んでおり、時間的なゆとりを新たな敵を描くことに存分に使っている。
また、相楽左之助の跳べない棒高跳びをお決まりにするなど、シリーズ物ならではの遊びも怠りない。
焼けただれた皮膚に包帯を巻き、冒頭の数分しか素顔が出ない藤原竜也だが、非情なうえ全身から明治政府を憎む鬼気迫る情念を発する演技はなかなかのもの。
志々雄の片腕“天剣の宗次郎”を演じる神木隆之介が小憎たらしく、志々雄一派の残虐性をこの二人だけでじゅうぶんに出し切っている。
物語は、前回以上に緋村剣心の弱点を突いてくる。剣心の弱点とは「優しさ」であり、「優しさ」対「非情」という図式が簡潔で分かりやすい。観客は、かつては“人斬り抜刀斎”と言われた剣心の「優しさ」に感情移入する。いわば、脛に傷もつ者が人を救うためなら命をも惜しまないという、時代劇がずっと描いてきたヒーロー像を踏襲した古典的な話なのだ。だが、史実をバックに自由な発想と現代的なアイデアとスピードを盛り込み、マンネリ化した時代劇に新しい風を吹き込むことに成功したのが、この「るろうに剣心」の実写版だ。
ただ残念なのは、駒形由美にふんした高橋メアリージュン。子供っぽい。とてもじゃないが、元吉原の花魁で今は志々雄の夜伽となった女には見えない。藤原竜也より年上でも構わないから、もっと色香を漂わせる女優を起用して欲しかった。今回は蒼井優の登場シーンが少ないので、よけいにその穴を埋められる女優の補強があったらと悔やまれる。時代劇に限らず、映画には大人の女を感じさせる女優が不可欠なのだ。
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