「出口のない暗さ」そこのみにて光輝く ごいんきょさんの映画レビュー(感想・評価)
出口のない暗さ
呉美保監督の「そこのみにて光輝く」。社会の底辺といわれるところで必死に生きていく主人公たちの姿に「誠実」という言葉を感じた。しかし、彼らの「誠実」は報われることなく、這い上がろうとしてもがけばもがくほど、さらに突き落とされていってしまう。
綾野剛と池脇千鶴という二人の人気役者が体当たりの演技で凄みを感じさせる。ひとことで言うなら「暗い」映画なんだけれども、70年代の日本映画の持っていた暗さとはまた別の暗さがある。70年代の日本映画の暗さは、社会全体は明るい方へ向かっているのに、自分たちだけがその明るさになじめないという暗さだったが、この映画の暗さは本当に出口のない暗さである。
原作の佐藤泰志さんの小説は恥ずかしながら読んだことがないのだが、CSで「書くことの重さ 作家佐藤泰志」というドキュメンタリー映画を見て、この人自身が抱えていた「誠実」な生き方と、報われない「暗さ」がこの映画にも反映されているのだなと感じた。
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