「佐藤泰志氏の世界を呉美保監督が描く」そこのみにて光輝く Don-chanさんの映画レビュー(感想・評価)
佐藤泰志氏の世界を呉美保監督が描く
バブル崩壊前に亡くなった函館の小説家の代表作を綾野剛さん主演で映画化。
達夫(綾野剛)のダメっぷり、からのラストの光を背負っているような演出。逆光のため後光にも見えるし、太陽が千夏を照らして眩しく光り輝いているだろう。これは達夫にとってのハッピーエンディングであると考察します。
拓児(菅田将暉)のバカっぷり、からの達夫と姉に光を見いだした喜び。最後までバカなんだけど、決して自己中ではない優しさがあって魅力的だと思いました。
中島(高橋和也)のワルっぷり、からの情けない小さくもがき苦しむ姿、カタルシスがあります。弱者を搾取する悪の権力の縮図を描いてると思いました。
千夏(池脇千鶴)の悲壮な思い、おそらく天性の闇の世界を照らす輝き。在宅医療というか自宅療養をしている家族で逃げずにストイックに生活していました。父親にとって娘という存在はスターですが、妻がいるのに性処理を娘がするのが当たり前になっているというのは、クレイジーに感じます。狂った家族と共に生活して、外に出ても狂った世界。そんな中で可能な限り精一杯やっていくという千夏の強さが、腐ったり落ちぶれたり諦めかけた男たちにとっては、救いになる希望の星なのかなと思いました。
呉美保監督の代表作にもなりました。
ディティールと光に拘っていて、独特なカメラワークで良かったです。
千夏を助手席に乗せて中島が運転する車が森林の中の一本道を進んで行くシーンは、後続車が先行車を見ているような視点でしたが、プラスに解釈すれば、違和感がインパクトとして印象に残ったので結果オーライだと思います。
明けない夜は無いけれど、光が当たらない場所は、ずっと暗いままです。
達夫が来て壁に穴が開いて、光が入るようになったのだと思いました。
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自死というのも闇に落ちることです。そういう結末を迎えた佐藤泰志氏が残した小説をもとにした映画は、本作の他に『海炭市叙景』(2010年公開のオムニバス映画)、オダギリジョーさんと蒼井優さんが印象に残る『オーバー・フェンス』(2016年)、『きみの鳥はうたえる』(2018年公開)、『草の響き』(「きみの鳥はうたえる」の単行本に収録された小説の映画化、2021年公開)、『夜、鳥たちが啼く』(「大きなハードルと小さなハードル」に収録されている短編小説の映画化、2022年公開、R15+指定)があります。
Don-chanさん
こちらこそコメント&共感ありがとうございます!
本作は役者全員の演技力が凄かった。
千夏を演じた池脇千鶴、この作品で更に好きになりましたね(*^^)
また他の作品でも映画レビュー拝見させてください(。・ω・。)ノ

