「衝撃!!としか形容しようがない」リアリティのダンス もしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
衝撃!!としか形容しようがない
「軍事政権下のチリで生きる少年はどんな夢を見るのか?
息子の死を乗り越え、ホドロフスキー監督が自身の少年時代と家族の絆の再生を描いた、魂を癒す物語。」
のキャッチフレーズから…いや、哲学的でまさしくその通りなのです。そのとおりなのですが…。
いや、まずもって、映像そのもののファンタジー度合が度肝を抜いて、作品に引きずり込みます。鰯の海にカモメの群れ、チリの乾いた空気に色鮮やかな建物の色彩、荒野をうごめく移民の群れ、消防隊の華やかな衣装、そして、青いセットアップに赤い靴の少年…空気、景色、衣装からお店の箱のラベルまで細部にわたるまでかわいらしく、大袈裟な演出でも魅了してしまう…とても素晴らしかったです。
そして、ストーリーのほうはフレーズどおり。権威的で暴力的で共産主義者の父と、自分を父の生まれ変わりだと思っている母、ユダヤであることで回りから拒絶されている学校という環境。隔離され、愛を感じられないアレハンドロは、親に振り回されながら、自分の親友とのふれあいやいじめを受けることの中で死ということ、人生ということを学んでいく。そして、父ハイメは自らの断固たる意志を貫くためにさまざまな行動を起こすが…。いや、アレハンドロの物語だと思っていたら、実は、このハイメのむちゃくちゃなやんちゃが家族との絆や回りの人との絆で改心され、最後は心を裸にしたときに、その本質があらわになるみたいなことなんでしょうかと。しかし、このハイメという人物、やたらめったらな方で本当にはらはらしました。それで、そのハイメがすべてをさらけ出し、改心をする中で、家族との絆を深めていくという感じか。
しかし、そのエピソードはまさしく驚きの連続。っていうか、この状況でそうなるか!!の連続で目がはなせません。ハイメが病に倒れた時…、手が動かなくなり喪心状態おn時…、働く喜びを得て協会でミサに参加したとき…、拷問を受けるの下り…、アレハンドロが港町のバーでいじめられた時、夜が怖くて眠れないとき…すべてのシーンは人としての本質に迫るものや、人として生きることの不条理を語るものだと思うのですが、これがまた、すごい方向で話をするよねと…。その演出がまた面白いんですけどね。
ただ、本当に、一つ一つの出来事が、人とは、生きるということとはということを語りかけているような気がして、本当に見たあとに反芻して考える映画でした。
機会があればまた見たいなぁと思います。