劇場公開日 2013年11月16日

「茨城の海と波と、月と松がきれいだった」天心 wahsanさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5茨城の海と波と、月と松がきれいだった

2013年10月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会、映画館

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知的

 江戸時代の鎖国の時代から、明治維新で西洋の文化が本当に急激に入ってきた。それは怒涛のごとく容赦なく、あらゆる方面にわたっていた。建築とか法律とか軍事にわたっても入ってきた。明治の初期はあらゆるもので混乱と混沌があったと言える。当然絵の世界でも入ってきて、そのうち日本人すべてが「日本の伝統的良いものよりも、西洋のもののほうが良いものと考えてしまう」ような風潮になっていた。
 富国強兵が叫ばれ、急激な欧州化によって日本の文化が軽んじられることとなる。廃仏毀釈もそんな頃行なわれた。仏像は破壊され、寺はつぶされた。そんな混乱のなかから、天心たちは新しい日本画の世界を創造しようとするのである。天才が故の狂気と、本物を求めるが為の貧困と、闘いながら彼らは事あたることとなる。それらが十分に表現されている映画だといえる。全編とてもよかったと思う。
映画の中で印象に残った場面は、木村武山の「阿房劫火(あぼうごうか)」という絵に対し、天心が・・・・・・・・・。
 それから全編に表れる茨城の海岸線の波も、月も松も美しく、実に素晴らしい風景であった。
 天心たちが五浦で過ごした時は、明治39年からの4~5年にすぎない。その短い間に彼らは、近代日本画の華々しい成果を世に表したのである。

wahsan