「カルトが導くディストピア」パージ MintSleepyさんの映画レビュー(感想・評価)
カルトが導くディストピア
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映画自体は割とオーソドックスなホラー風の演出で最後までそこそこ飽きさせない佳作といったところ。
この作品で気になるのはやはり『パージ』という設定そのものにある。一年に一度殺人を含む全ての犯罪が許される日。なぜそれが『パージ』と呼ばれるのか?
実はこれは弱者排除による社会浄化思想が背景にあることが劇中でほのめかされる。これを提唱した人物はアメリカの新たな建国の父と讃えられ個人崇拝の対象になっているようだ。また率先して『パージ』を支持し行動する集団は彼らが正装と呼ぶ似たような衣装を身に付けている。(白いワンピースの女性が一番分かりやすい。)これは一種宗教めいたものを感じさせる。これはアメリカ特有のマチズモや宗教右派勢力の影響力が増していることのカリカチュアだとは思うのだが、困ったことにこの価値観を肯定する見方も否定する見方も出来てしまうのが鑑賞後に一番悩んだ部分だ。
暴力と結びついた人種差別は現実のアメリカでは今でも大きな社会問題だし、オバマケアへの根強い抵抗へのように社会的弱者への自立の強要といった自由主義への強力な拘りもアメリカ社会の通奏低音だ。似たようなキナ臭さは日本でも目につき始めている。同じバイオレンスに溢れた映画でもマッドマックスなんかより遙かに危険な一本だと思った。
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