「設定こそすべて」パージ ぺむぺるさんの映画レビュー(感想・評価)
設定こそすべて
「年に一度、殺人を含むすべての犯罪が合法化される夜がある」という、単純かつ現実には絶対ありえない設定こそすべての映画。とりたてて面白いストーリー展開は、ない。
あまりにひねりのない単調なストーリーのため、途中で変な予想をたて始める自分がいた。「主人公夫婦は実は戦闘能力がめっちゃ高くて、襲いくる敵をバッタバッタとなぎ倒していくんじゃないか」とか。これはハズレ。
「最初に出てきた近所のおばさん、あとから絶対出てくるよな」と思ってたら、別の人物(主人公を襲ってきた女性。死体の仮面が取れて、それを主人公が見つめてた?)がそれだと誤認識。あとから本人出てきたが、「あ、こっちか」と、まったくの肩透かしであった。
襲われる妻を最初に助けたのが黒人夫婦だったので、「白人=エリート、襲う側/黒人=ホームレス、襲われる側」ってゆーこれまでの図式に、スーパー富裕層=黒人、正義の鉄槌 が出てきて、実は逃げてきたホームレスもこの階層で…のどんでん返しを期待したが、それもなかった。まあ、そんなんないわな。
とはいえ、この映画にはいいところもいくつかある。まずは、なんといっても設定だ。これだけでご飯三杯、というわけではないが、90分なんの味付けもなしに(たとえばストーリーの面白さとか)引っ張ることができる。現になんの面白みもないストーリーだが、見ている間、私は一切の退屈を感じなかった。本当に素晴らしい設定だと思う。
次に、完成度の高い映像。特に、監視カメラの映像を効果的に使っている。全国各地の凶行を伝えるオープニングの映像は、監視カメラだからこその不気味さと凄みがあって秀逸。
ムダなシーンのない編集も好印象。何度も言うが、大したことのない話なのに、最初から最後までダレない。
あとは、黒幕的な「新しいアメリカ建国の父」。ニュース中にしか出てこないがゆえに、不気味な存在感がある。そのせいで残る後味の悪さも、結構好きだったりする。
シリーズ化されているらしいが、続きを見たいかというと微妙なところ。なんとなく、これ以上面白くならない気がする。「建国の父」の正体がわかったりなんかして、不気味さ、荒唐無稽さに現実的解釈が施されていくようなら興ざめだなあ。